村本:それは本当に考えるんですよ。いつも「死ぬ前に何を喋るか」と思って舞台に立っているんです。特に独演会なんかは、最後のあれじゃないと伝わらない。

 たとえば、赤ちゃんはおねしょをしたり、うんこをしたり、食べ物を散らかしたり、泣いたりするでしょう。でも、「赤ちゃんやからしょうがない」って言うじゃないですか。さらに高いところから見たら、人間が殺人を起こして、戦争をすることも「人間やからしょうがない」ですむと思うんですね。赤ちゃんと何ら変わらない例えをされる。「さすが人間やからしょうがない」「赤ちゃんやからしょうがない」と。せっかく人間に生まれているんで、人間であるということを笑い飛ばすというか。人間って面白く、「自分のことじゃない」と思って大爆笑する生き物なので、そこを「笑い」にできたら気持ちいいかなと思う。「人間のことをすっごいバカにしているのに、人間が拍手をして笑う」という人間の様を表現したいと思っています。

野上:それは村本さんがゼロからイメージされているんですか?

村本:ゼロからですね。

野上:すごいね。

村本:ゼロからです。僕、レニー・ブルースというコメディアンが好きで、彼の言葉に「I’m not a comedian. I’m Lenny Bruce.」という言葉があります。僕も「I’m not a comedian. I’m Daisuke Muramoto.」っていうスタンスでいこうと。村本大輔という人間がたまたま「よしもと」という舞台で喋っているだけ。野上さんも、そうじゃないですか。「朝日だから」「がんだから」じゃなく。

野上:そうかもしれない。だから、自分をどれだけ出せるかということをやっていかなければと思っています。何だか真面目に喋りすぎたかな。

村本:僕、本を読まないけど、こういう話を聞くとずっと心に残る。「あえて言う」という言い方をすると、「野上さんががんになってくれてよかった」と思うんです。

野上:村本さんにとって?

村本:うん。気付きがいっぱい与えられて、僕もいつかそうなった時に思い出す気がする。

野上:がんになる確率は2分の1で、人間は何かしらで必ず死ぬからね。すい臓がんはちょっと面倒くさいだけで。

村本:すい臓がんは面倒くさいだけ? ハハハ、かっこいいな。

(構成/AERA dot.編集部・森下香枝、福井しほ)

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福井しほ

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大阪生まれ、大阪育ち。

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