■警察小説大賞、立ち上げの真意は?

 作家・翔田寛が原作の同ドラマ。翔田はこれまで日本推理作家協会賞の候補に上がり、2008年には江戸川乱歩賞を受賞。また2016年にはこの「真犯人」(小学館)で大藪春彦賞の候補になるほどの本格派だ。当然、ドラマにも地上波の放送では再現しきれない緻密さや表現がふんだんに盛り込まれているという。

 一方で背後には出版社を巻き込んだ動きもあるようだ。大手出版社の宣伝担当者は言う。

「小学館は最近、特に警察小説に力を入れているようで、9月末の締め切りで『警察小説大賞』を開催中です。審査員の1人で作家の相場英雄氏は小学館から刊行された『震える牛』のほか、『血の轍』(幻冬舎)『不発弾』(新潮社)が、WOWOWでドラマになっており、親和性も高いようです」(出版社の宣伝担当者)

 警察小説大賞の受賞作品をWOWOWがドラマ化するという流れなのか。見応えのある本格的な社会派警察ドラマが今後、増えてくるのかもしれない。

「いわゆるエンタメ小説やコミック原作のドラマ化は今後も変わらず民放を中心にやっていくでしょう。一方で、連続ドラマWでは良質な社会派作品のドラマ化を続けていくと思います。過去には『震える牛』で食肉偽装問題、真山仁原作の『マグマ』で地熱発電問題、清武英利による金融モノ『しんがり 山一證券 最後の12人』では山一證券倒産の内幕など、民放ではスポンサーとのハレーションが起こって絶対に製作できないような作品のドラマ化に取り組んできました。WOWOWのドラマ部も非常にプライドが高いようで、『民放ができない作品をうちがやらねば!』という使命感を感じます。広告収入がメインの民放と違って、有料放送サービスなのでスポンサーに気兼ねすることなく、作品選びからキャスティングまでできるのが魅力です。これはNETFLIXやアマゾンプライムと同じ方式ですが、日本にもこうしたドラマが生まれる素地はあるんです」(前出のよしひろ氏)

 視聴者にとっては本格派のドラマが増えることはうれしい限りだ。(ライター・黒崎さとし)