引退を表明したロッテ・大隣投手(c)朝日新聞社
引退を表明したロッテ・大隣投手(c)朝日新聞社

後縦靭帯骨化症の図説
後縦靭帯骨化症の図説

【後縦靭帯骨化症を図説】

「『勇気をもらいました』『元気をもらいました』というコメントが多くて、直接言われることもありました。今まで応援してもらった分、ファンの方や(靭帯骨化症の)病気で苦しんでいる人に少しでも恩返しをと思いながら、ずっと投げてきました」

 ロッテの大隣憲司投手(33)が今シーズン限りでの引退を発表し、記者会見でこのように語った。

 近畿大から2006年にドラフト希望枠でソフトバンクに入団した大隣は12年に12勝し、13年のWBCに出場。この年もエースとして期待されたが、シーズン中に靭帯骨化症の一種である「黄色(おうしょく)靭帯骨化症」と診断された。手術を経て翌年に復帰したものの、17年に戦力外通告。今年2月にロッテに入団したが、引退を決意した。

 黄色靭帯硬化症は、後縦(こうじゅう)靭帯骨化症と同じく厚生労働省指定の難病で、プロ野球選手では巨人の越智大祐投手、ヤクルトの徳山武陽投手らを引退に追い込んだ。故・星野仙一氏も同じ病気を患っていたことを14年に公表している。現役選手では、ロッテの南昌輝投手が今年8月に手術を受けた。

 黄色靭帯は脊髄の後方に、後縦靭帯は脊髄の前方に位置する。後縦靭帯骨化症の患者は、黄色靭帯骨化症を合併しやすいのも特徴だ。

 患者数は黄色靱帯骨化症が360人であるのに比べ、後縦靭帯骨化症は3万3000人と圧倒的に多い。欧米人よりも日本人が発症しやすく、プロ野球選手だけではなく一般人でも原因不明の病に悩む人は多い。一方、近年の研究では、特定の遺伝子が発症に関与していることもわかり、骨化の増大を抑える治療法も実施されている。靭帯骨化症の中で患者数の多い後縦靭帯靭帯骨化症について、詳しく解説する。

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 背骨にある靱帯が骨のように硬くなり、脊髄の神経を圧迫する「後縦靱帯骨化症」。進行には個人差があるが、早めの手術で、日常生活に支障がない程度にまで回復することも多い。近年では、圧迫を取り除いた後に骨を固定することで骨化の増大を抑える「後方除圧固定術」の有効性が報告されている。

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発症しやすい年齢は?