一方の打線はロペス、筒香嘉智、宮﨑敏郎の中軸が安定した成績を残し、新外国人のソトも30本塁打以上を放つなど破壊力は広島にも負けていない。ただFAで獲得した大和も故障で離脱した時期が長く、センターラインが固定できなかったことは課題だ。長打で打ち勝つ野球ができるため、残りはやはり投手力と守備力。特に投手はエースになれる素材を育てる必要がある。すぐに使えそうなタイプのサウスポーを揃えて目先の勝利を狙う戦い方は限界が見えてきただけに、先発もリリーフも大きく見直す時期に来ているだろう。

 昨年まで球団ワーストとなる5年連続Bクラスに沈み、今年もAクラス入りが難しくなってきた中日。今年は得点力はアップしたものの、投手陣の崩壊に泣いた。シーズン前に期待していた若手が揃って伸び悩み、エースにならないといけない大野雄大もまさかの0勝。新外国人のガルシア、ローテーションの谷間の役割と見られていた松坂大輔が先発の勝ち頭という状況では下位に沈むのも無理はない。加えてリリーフ陣も抑えの田島慎二が防御率7点台と散々な成績に沈み、セットアッパーの又吉克樹も全く機能せずに終盤に逆転を許すゲームが多かった。ルーキーの鈴木博志、9月から抑えを任せられている佐藤優を中心に再編が急務である。

 打線はビシエド、アルモンテの外国人二人への依存度が高いのは気になるが、平田良介がようやく安定感が出てきており、高橋周平、福田永将の二人が規定打席をクリアするなどようやく形はできてきた。ただ、二軍に将来の楽しみな若手がおらず、相変わらずスタメンの平均年齢は高い。平田と大島洋平が元気なうちに次代の主力を育てることができるかが長期低迷を脱するカギになるだろう。

 最後は今年も見せ場のないままシーズンを終えようとしている巨人。昨年は山口俊、森福允彦、陽岱鋼の三人をFAで獲得し、今年もFAで野上亮磨、中日からゲレーロ、アメリカ帰りの上原浩治など大型補強を繰り返したが、結局は誰も期待したような結果を残すことなくシーズンを終えようとしている。成績が悪くなると、外から補強して何とかするというのはもはや巨人の伝統となっているが、超一流選手はメジャーに移籍することを考えると有効な手段にはなっていない。

 戦力的にみると気がかりなのは投手陣だ。菅野智之に続く先発投手が育っておらず、リリーフも外国人頼みの状態が続いている。一方の野手は岡本和真が独り立ちしたことが何よりも大きい。坂本勇人もまだまだ余力がある。外野が高齢化しているのは気がかりだが、それなりの戦力は揃っている。岡本とともにクリーンアップを打てる強打者タイプを育てたいところだ。二軍は投手なら高田萌生、野手なら和田恋など楽しみな若手が出てきているだけに、外からの補強に頼らずに抜擢するスピードを早めたい。

 シーズンを通じて独走した広島だが、チーム防御率は4点台と決して盤石ではない。ただ丸佳浩、鈴木誠也、松山竜平の中軸、菊池涼介、田中広輔の二遊間などが安定しており、控えの層も厚く野手の充実ぶりはやはり頭一つ抜けている。しかし、このまま広島の天下が続くようであればやはり物足りなさを感じるファンも多いはずだ。来年は終盤までもつれるペナントレースになるように、5球団の巻き返しに期待したい。(文・西尾典史)

●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。

著者プロフィールを見る
西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

西尾典文の記事一覧はこちら