木梨憲武 (c)朝日新聞社
木梨憲武 (c)朝日新聞社

 9月19日放送の『1億人の大質問!?笑ってコラえて!』で異例の事態が起こっていた。収録時に胆のう摘出手術のために休養していた所ジョージに代わって、彼と親交の深いとんねるずの木梨憲武が特別にMCを務めることになったのだ。番組冒頭で佐藤栞里が所ジョージの体調不良による欠席を伝え、MCとして木梨を招き入れた。

 木梨はMCという不慣れなポジションに戸惑いながらも、軽快に番組を進めていった。所の口調をそっくり真似て「笑ってコラえて!」「ついたて~!」「アタック!」などと決まり文句を言うところも芸達者な木梨らしくて面白かった。

 3月に『とんねるずのみなさんのおかげでした』が終わって以来、とんねるずのコンビとしての活動は一時休止したような状態になっている。その一方で、木梨は単独で精力的に活動している。4月には主演映画『いぬやしき』の告知のために数々のラジオ番組やテレビ番組に出演。そのいずれにおいても、自由奔放な振る舞いで共演者たちを驚かせ、視聴者を楽しませていた。『ウチのガヤがすみません!』では、ピンポン玉を連射する機械を芸人たちに向けてスタジオを荒らし回り、『チマタの噺』では笑福亭鶴瓶の話の腰を折りまくり、鶴瓶をあきれさせた。

 とんねるずというコンビには「暴力的で偉そう」というネガティブなイメージがついて回っている。そして、一般的には石橋貴明がその負のイメージを一手に背負っている。『日経エンタテインメント!』の「嫌いな芸人ランキング」でも2016年と2017年に石橋が2年連続で1位になっている。

 だが、とんねるずのコンビとしての活動を冷静に眺めてみると、ここぞという場面で無茶な行動に出るのはむしろ木梨の方なのだ。『みなさん』の「全落オープン」という芸能人を落とし穴に落とす企画では、木梨が現場レポーターの役を務めていた。木梨は、いったん落とし穴に落ちて上がってきた芸能人に話を聞くふりをして、再び穴や池に突き落とすといういたずらをたびたび行っていた。ときには、ターゲットになっていないスタッフなどを突然落としてしまうこともあった。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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なぜ石橋と木梨の好感度にはこれほど差があるのだろうか…