その後、印象に残っているシーンを問われると、なんと全員が「夫婦二人でサンドイッチを食べるシーン」と同じ回答。このシーンは、原作にはないものだという。

 妻夫木さんは、「ただ二人で、黙々とサンドイッチを食べるシーンなんですけど、生命力を感じさせるというか……。深い悲しみの中でも、『これから二人で生きていくんだ』という誓いのようなものを感じました」と語った。

 イベントの後半には、息子役の小岸洸琉くんも登場。撮影後、会うのは久しぶりのようで、井上さんは「大きくなったね」と小岸くんの成長に目を細めた。ドラマでは、親子3人で旅行に出かけるシーンがあるが、撮影前に親睦を深めるため、実際に3人だけでピクニックに行ったという。

 妻夫木さんは「そのとき雨上がりだったんですけど、洸琉くんが、すごい勢いで坂を駆け下りて、泥まみれになってしまって……」と、軽いハプニングがあったことを告白。「本気で焦った」と苦笑しながらも、井上さんは「3人で過ごした楽しい時間があったからこそ、それを思い出しながらその後も母親を演じることができた」と、本物の親子のような絆の深さを感じている様子だった。

 最後に妻夫木さんは、「ドラマの中では、息子の死の原因がどこにあるのか、怒りの矛先をどこに向ければいいのか、ずっと探りながら演じていた。そうした悲しみや怒りの感情が乱反射して、最後に自分に返ってきたときに『それでも隣に大切な人がいる』ということが、これからも生きていく理由につながっていく。そんな夫婦の静かな歩みを見てもらえれば」と、見どころを語った。(ライター・澤田憲)