1995年7月21日の横浜vsヤクルト(神宮)の9回2死、古田敦也のあわやサヨナラ本塁打という微妙な打球(判定は二塁打)のリプレー映像が電光掲示板に映し出され、小林毅二球審が「そんなVTR流すな」と抗議した事件をきっかけに、審判部と各球場の間で、ファンの間で騒動が起きないよう「微妙な打球の映像は流さない」という取り決め事項がかわされた。

 にもかかわらず、それが守られなかったために、「映像が出た以上、判定を変えないと収まらない」と退場覚悟で抗議したのである。「あれを流した以上、オレは出ていかなくてはならない。退場にならなければ、収まりがつかないだろう。判定が覆れば、高田(繁)監督が退場にならないと収まらない。監督が退場しなければ収まらないんだ。審判も被害者だ」。

 監督の退場劇はついカッとなっての暴言や暴行というパターンが多いなかで、事前に腹をくくって出ていったのは、いかにも落合流である。

 リプレー検証やリクエストが導入された現在だったら、落合監督の退場回数も減っていたかもしれない。

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

著者プロフィールを見る
久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

久保田龍雄の記事一覧はこちら