中日監督時代の落合博満 (c)朝日新聞社
中日監督時代の落合博満 (c)朝日新聞社

 2018年シーズンも終盤戦に差し掛かり、クライマックスシリーズを巡る争いが気になる今日この頃だが、懐かしいプロ野球のニュースも求める方も少なくない。こうした要望にお応えすべく、「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に、現役時代に数々の伝説を残したプロ野球OBにまつわる“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「“オレ流”落合博満の退場編」だ。

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 落合博満が20年間の現役生活で初めて退場処分を受けたのは、ロッテ時代の1986年10月8日の西武戦(西武)。

 1対1の同点で迎えた7回、西武は1死一、二塁で辻発彦がセンター方向にフラフラと打ち上げた。古川慎一が懸命に前進し、ライト・愛甲猛もバックアップしたが、打球は古川のグラブをかすめてポトリと落ちた。

 この間に二塁走者・伊東勤が勝ち越しのホームイン。一塁走者・岡村隆則も三塁を狙ったが、愛甲から返球を受けたサード・落合がスライディングしてくる岡村にタッチしたかに見えた。

 ところが、小林晋三塁塁審の判定は「セーフ!」。激高した落合は、両手で同塁審の胸を2、3回突き、退場を宣告された。ベンチから稲尾和久監督も飛び出し、試合は約4分にわたって中断した。

「手を出したこっちが悪いんだから、退場を言われても、何も言えない。でも、完全にアウトだ」(落合)

 結果的にこの退場劇が勝敗を大きく分ける。試合再開後、ロッテは、先発・深沢恵雄に代えて、前日3回2/3のロングリリーフをしたばかりの荘勝雄を投入したが、これが裏目。石毛宏典を敬遠後の1死満塁で金森永時に右越え二塁打を許し、清原和博、片平晋作にも打たれて1対6。リーグ三冠の主砲を退場で欠いたロッテ打線にもう反撃する力は残っていなかった。

 6月5日のブーマー(阪急)、同13日のデービス(近鉄)に次いでパ・リーグではシーズン3人目の退場となった落合は「あれら(投手への暴力行為)と一緒にしてもらっちゃ困るよ。でも、オレもまだ若いんだね。野球を辞めるまで退場なんて考えてもいなかったよ」と野球人生初退場に複雑な表情だった。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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