自宅から出てきた柳瀬氏と木原らとのやりとりの一部は次の通りだ。

 木原 「この訪問には加計学園の事務局長も同席していた。それも記憶がないか」
 柳瀬氏「加計? いやあ」
 木原 「加計学園の事務局長と会ったことは?」
 柳瀬氏「加計さんと総理が会うときには秘書官はいる。でも、いずれにしても記憶にない」
 木原 「われわれの取材は間違いということか」
 柳瀬氏「うーん、覚えてない。いっぱいいろんな人と会うから、秘書官は」

 私たちは面会をめぐる確認できた事実関係を基に、17年8月10日付朝刊1面トップで<首相秘書官、加計側と面会 15年4月 新学部提案前 官邸で>という見出し(東京本社最終版)で報じた。柳瀬氏の言い分も、見出しを立てて掲載した。

 それから約8カ月後、取材班は、この面会の中で柳瀬氏が、獣医学部新設について「この件は、首相案件」と発言したと記録された愛媛県の文書を新たに入手。18年4月10日付朝刊1面トップで報じた。これを受け、18年5月10日に開かれた衆院予算委員会に出席した柳瀬氏は、「加計学園の事務局の方から面会の申し入れがあり、その後の報道などを拝見すると、おそらくこれが4月2日だったのではないかと思うが、加計学園の方、その関係者の方とお会いした」と述べ、加計学園側と面会していたことは認めた。愛媛県や今治市職員が同席していたかどうかについては、「今でも分からない」とする一方、「一連の報道や関係省庁による調査を拝見すると、随行者の中にいらっしゃったのかもしれないな、というふうに思う」と述べた。

 加計学園の獣医学部新設をめぐる報道では、関係者から「記憶にない」といった答弁やコメントが繰り返された。だが、取材を続けることで、新たな事実が明らかになり、問題の背景や構造がより鮮明になる。今後も、「事実」に真正面から向き合い、報道を続けていきたい。(朝日新聞文化くらし報道部生活担当部長・西山公隆)