「I have seen you before.」(以前、君に会ったことがあるよ)


 などと気を引いてから、
「I chased you this morning. I waited here after that.」(朝から追いかけて、ここで待ってたんだ)

 ここで「ストーカーか!」とツッコミを入れてくれたら勝ちである。日本語に訳してみると、少々ベタなぐらいでちょうどいい。明らかな嘘を交えたり、適当な言い訳を並べたりするのは常套手段なので、人によって様々なパターンがあるだろう。どれも、さすがに本気にする人はいないし、さきほどの会話だって、臭くてアホらしいことぐらい欧米の女性たちだってわかっている。決してロマンチックだなんて思っていない。あまりにアホらしいことを言うので、思わず笑ってしまうのだ。そうなると、よほど条件が合わない場合を除き、マナーとして一杯飲む間ぐらいは会話にお付き合いしてくれるのである。

 場所と価値観をわきまえておけば、あれこれ悩むよりも簡単に出会いのシーンを演出することができる。ただし、笑わせたあとの会話にも気を配らないと、さらに次の展開にはいけないので、そこらへんは会話をもっと勉強しておく必要があるだろう。

(文/ジャーナリスト・丸山ゴンザレス、イラスト/majocco)

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丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス/1977年、宮城県出身。考古学者崩れのジャーナリスト。國學院大學大学院修了。出版社勤務を経て独立し、現在は世界各地で危険地帯や裏社会の取材を続ける。國學院大學学術資料センター共同研究員。著書に『世界の危険思想 悪いやつらの頭の中』(光文社新書)など。

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