企業内弁護士を多く抱える企業トップ20。日本組織内弁護士協会調べ(2017年6月末時点)
企業内弁護士を多く抱える企業トップ20。日本組織内弁護士協会調べ(2017年6月末時点)
企業内弁護士の採用者数。日本組織内弁護士協会調べ(各年の調査時点は6月)
企業内弁護士の採用者数。日本組織内弁護士協会調べ(各年の調査時点は6月)

 近年、企業内弁護士が急増し、注目されている。「大学生と社会人のキャリアを切り拓く 大学院・通信制大学2019」(朝日新聞出版)では、弁護士、裁判官、検察官を目指す人向けに法科大学院を特集。その中から、「企業内弁護士を多く抱える企業トップ20」とトピックを紹介しよう。

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 司法制度改革の一環として弁護士業務の規制緩和が一部進展し、弁護士登録をしながら、営利企業の取締役に就いたり、企業に就職をしてその企業の弁護士になったり、活躍の場が広がった。さらに、任期付の国家または地方公務員としても活躍することができる。企業に就職をしてその企業の弁護士として活躍する者を企業内弁護士、国家または地方公務員として活躍する者を任期付公務員弁護士と呼ぶ。

 その中でも特に注目したいのが企業内弁護士だ。

 企業内弁護士や任期付公務員、取締役に就く弁護士などによる会員組織の日本組織内弁護士協会の調査によると、企業内弁護士の数が堅調に伸びている。2011年の587人に対し、17年は1931人となり、企業内弁護士は6年間で3倍以上増えている。

 さらに、司法試験に合格して司法修習を終えて、弁護士事務所経験をせずに企業内弁護士に就いた弁護士の増え方も堅調だ。いわゆる企業内弁護士直行組は08年の42人に対し、16年は96人、17年は76人となり、企業による企業内弁護士の採用意欲の高さがうかがえる。

■企業内弁護士の役割

 企業内弁護士は企業に雇用される形になるものの、弁護士業務にあたっては独立した立場が保たれる。仮に社内で不祥事が起これば、公正・中立な立場から事件の真相究明に当たり、再発防止策を練る。また、不祥事が起きないように、社内に法令順守を指導する予防法務活動も担う。企業コンプライアンスや企業の説明責任などに社会の視線が集まる中、企業内弁護士の活躍に期待が寄せられる。

 企業内弁護士が担う業務で最も多いのは、契約審査業務だ。取引先企業との契約内容に関して、損害を被るリスクを回避したり、契約内容に法令にそぐわない点があったりしないかなど、契約審査は弁護士の力量を発揮する良いチャンスになる。

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