2015年11月の日本戦の時を振り返ってみても、カンボジア代表はナショナルオリンピックスタジアムから徒歩圏の1泊3000円程度の安ホテルに滞在。最上階にある小さな食堂でミーティングを行い、全員で古いバスに乗って練習会場へ移動していた。トレーニング後のマッサージなどケア体制もほぼない状態。試合後は選手が各自でトゥクトゥク(バイクタクシー)に乗って帰路に着いていた。約3年が経過した今は宿泊ホテルのグレードも上がり、マッサージ師などもつくようになったというが、超高級ホテルに泊まって日本人コックの作った食事を摂り、万全のケア体制の中でサッカーに打ち込める日本代表と環境が違うのは事実だ。

 実際、ピッチで戦っている鈴木も環境などの難しさを痛感する日々だ。

「1部リーグのスタジアムはほぼ天然芝。昨年所属したプノンペン・クラウンは天然芝の素晴らしいスタジアムでしたけど、他のクラブを見ると芝が剥げていたり、凸凹になっているピッチが多いです。現在のクラブの本拠地はナショナルオリンピックスタジアムで人工芝。そこの質も日本ではあまり見ないようなレベルで、まだまだ改善が必要ですね」

 もう1つの問題点はカンボジア人の国民性にある。この国の人々は先を見越して計画的に物事を進めていくことを苦手としている。それはサッカーのレベルアップにとってはマイナスと言わざるを得ない。

「日本人だったら少し給料が低くても環境がよかったり、将来性の高いクラブを選ぶことはよくありますが、カンボジア人選手は目先の給料だけでチームを選ぶ傾向が強いです。海外に出て行こうという野心も日本人ほどなく、やや内向きかなと感じる部分もあります。『試合のために練習でここを修正していこう』といった意欲も不足気味なので、なかなか緊張感あるトレーニングがしづらいと思います」と鈴木は指摘する。

 ワールドカップ3大会連続ゴールを挙げたメンタルモンスターの本田ならば、そういう部分を変えられる可能性は少なからずあるのではないか。鈴木もそんな期待を口にする。

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カンボジアでは日本人がリスペクトされている