休場が続いた間、稽古場でも「稀勢の里の相撲」が見られることはほとんどなかった。しかし、この秋場所前にはその兆しが見られた。二所ノ関一門の連合稽古では、ケガをして以来見られなかった力強い左おっつけが復活し、実力者の玉鷲を圧倒する場面もあったという。秋場所の土俵でも、そんな相撲を見たい。もしも優勝が遠のき、星勘定は苦しくなったとしても、15日間、最後まで取り切ってほしい。もしも不本意な成績に終わったり、ケガなどのアクシデントに見舞われたとしても、復活への手応えをつかんだのなら、また休んで再起を期したっていい。再び「稀勢の里の相撲」が見られることを、心から願う。(文・十枝慶二)