(撮影/今西憲之)
(撮影/今西憲之)

 台風21号が直撃した近畿地方だが、各警察の集計によると、大阪、滋賀、愛知、三重で11人が死亡。大阪や愛知など21府県で約292人が負傷し、住宅被害は、大阪をはじめ17府県で一部損壊など317棟に上ったという。

【写真特集】台風の威力を物語る生々しい爪痕…

「バリバリ、ドーンという音がして何事から思って窓から外を見ると、大きな木が電柱やフェンスをなぎ倒して、根元から折れていたのです。本当にびっくりで、息が止まりそうだった」

 大阪市内に住む男性は青ざめた様子でこう振り返る。

 倒れてきたのは、幹回り2・8m、高さ15mほどのクスノキ。2車線の道路を完全にふさぎ、近くの店舗の2階の窓に枝がめり込んでいる。国道1号線に通じる交通の多い道が完全に封鎖され、大渋滞したという。

 大阪の沿岸部の被害はよりすさまじいものだった。大阪市住之江区、大阪府咲洲庁舎前のコインパーキングには、10台を超す車が原型をととめないまま、放置されていた。

 車の窓ガラスはすべて粉々に割れ、天井はへこみどうすればこれほど、傷んでしまうのかと思うほどだ。強風で駐車場から路上にふきとばれた車を見に来ていた所有者が青ざめた表情でこう話した。

「咲洲庁舎に用事があって、駐車場に車を置いていたのです。風雨が強まり庁舎の中で様子をみていた。すると、強風で次々に車が飛ばされていく。私の車は4,5回転して、フェンスを突き破って路上にまで吹っ飛ばされた。もう映画の世界かと思うことが現実で、驚くばかり。車に乗っていたら、命もヤバかったくらいのすごさでした」

 関西空港も台風で甚大な被害が出た。大阪のベイエリアは、2025年の万博やIRのカジノ誘致に名乗りをあげている。その核となる関西空港が、台風で“陸の孤島”になるという現実を見せつけられた格好だ。

「台風が過ぎ去り、貨物ターミナルに戻ったら、足首くらいまで浸水。滑走路を見ても、水でよくみえない。『関空沈没だ』と同僚とあきれるしかなかった」(貨物ターミナルで働く男性)

 本来なら大阪で災害復旧の陣頭指揮をとらねばならない松井一郎知事だが、停電が続いていた7日、その姿は府内になかった。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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停電の最中、沖縄へ飛んだ松井知事