実際、筆者の実証分析でも、ネット上では極端な意見や、ネガティブなクチコミの方が投稿されやすいことが分かっている。

 憲法改正を主題とした調査では、ごく一部の極端な意見の持ち主が非常に多くの投稿をしており、ネット上では極端な意見が最も多くなっていることを示した(実際には中庸的な意見の持ち主が最も多い)。また、ネット上のクチコミに関する調査では、iPhoneX等の8つの製品のうち、6つの製品で、低い評価の人の方がクチコミを書く傾向にあるということが分かった。

 批判的な意見も、賛同する意見も、偏ったごく一部の人の意見かもしれない。それはネットの意見に限らない。電話による意見も、店頭での意見も偏っているだろう。マスメディアだって、記事を書いたり、番組を制作したりしている人の思惑が反映されているのだから、偏りを持っている。

 このような分析結果を見ると、ネット言論というのは取るに足らない、無視して良いもののように見えるかもしれない。しかしながら、前述したように、経済・社会・政治に大きなインパクトを持っているし、ビジネスでの活用も効果的である。また、人々が自由に・平等に情報発信できることは、大いに歓迎されるべきことである。

 実態を踏まえたうえで、批判を過剰に恐れて表現を萎縮したりしない、それこそが、情報の氾濫する一億総メディア時代、不寛容社会において、我々が持つべき姿勢なのである。