誤解してほしくないのは、チームマネジメントの原則は決してトップダウンではないということ。マネジャーの役割は、グーグルの10項目を見ればわかるように、あくまでもメンバーのサポーターなのです。チームのメンバーの一人ひとり、そしてチーム全体の成果が向上するように、あらゆる面で支援しなければなりません。

 マネジャーによる意思決定というのは、どういうときにどんなふうにメンバーに伝えるのかがとても大切です。

 たとえば、メンバーが何か失敗した場合。本人にプライベートな心配ごとがあったり、体調が悪かったりというときには、厳しい指摘をする状況ではありませんね。その前に、休む必要があれば「休んで」、悩んでいるのであれば「話して」とやさしく伝える。それがマネジャーに求められる、いわば決断力です。もちろん、元気なときには「それはダメ」とすぐに指摘する。「ごめんなさい。反省します」と言っている相手に対して、「いますぐ改善して、動いて」と厳しく伝えなければならないわけです。

 こうしたTPOに合わせたボトムアップとトップダウンの使い分けも、マネジャーに求められる強い意思決定の一つだと思いますね。

 TPOには当然ながらメンバーの要望も含まれます。なので僕は、いつもメンバーに対して「いま僕から何が欲しいんですか?」と聞くようにしています。「やさしさが欲しいし、厳しさも欲しい」「すぐフィードバックが欲しい。困っている・心配しているときには察知して欲しい」「失敗しそうなプロセスに巻き込まれているのであれば、それはダメと言って欲しい」などという答えが返ってきます。

 強い意思決定には、やさしさと厳しさの両方あっていいと思います。ただそのためには、いつでも何でも話してもらえる、こちらの言うことを聞いてもらえる強い信頼関係をつくっておくことが不可欠でしょう。マネジャーにしてもメンバーを信頼していなければ「これをして」と強く言えないはずです。

 強い信頼関係をつくるためには、メンバーと建設的な会話を繰り返さなければいけません。その中で信頼を失うこともあるかもしれない。けれども信頼関係を立て直すためには、また声をかけて話し続ける。じつは僕も日々、その繰り返しです。

 毎日メンバーに声をかけて、毎日探求して、毎日一緒に仕事をする。そうやって信頼関係を強くしないとチームの成果は向上しないと思いますね。「別に話さなくても仕事が回っているからうちのチームは大丈夫」などと思う人は、だいぶ重い大企業病におかされているのではないでしょうか。

(構成/高橋和彦)