しかし、第2節のハノーファー戦では一転して攻撃が手詰まりになり、ドルトムントはスコアレスドローに終わっている。ハノーファーはライプツィヒとは異なり、4-4-2の各ラインが縦、横のスペースを均等にカバーし、ドルトムントに高速攻守転換を発動させなかった。このゲームで浮き彫りになったのはドルトムントのゲーム支配力の低さだ。アウェーゲームだったとはいえ、ボールポゼッション率44パーセントで相手に劣り、1トップのマクシミリアン・フィリップ、そして両ウイングのロイスやマリウス・ヴォルフへ良い形でボールが渡るシーンがほとんどなかった。相手が専守防衛に努めたわけでもないのに攻撃が閉塞した一因として、パスワーク、ボールキープ力に秀でる存在が不足したドルトムントの中盤に課題があると見る。

 今のドルトムントには、ゲーム支配力を高められる選手がいる。ひとりはドイツ代表歴もある22歳のMFユリアン・ヴァイグルだ。今季の彼は負傷で出遅れていたが、巧みなボールキープ力で中盤の底からゲームを組み立て、広角な視野を駆使して味方へパス供給できる彼がピッチに立てば、相手を自陣に釘付けにできるケースが増えるだろう。ただ、彼の最適ポジションはアンカーで、現在のレギュラーであるヴィツェルと共存させるにはダブルボランチを用いる4-4-2へシステム変更せねばならない。この場合は2トップ、2サイドハーフの布陣になって中盤中央でのボール奪取力が陰る懸念が生まれ、ファブレ監督の求める戦略志向にそぐわないかもしれない。

 そしてもうひとり、香川の力をもってすればドルトムントの攻撃を活性化できるだろう。俊敏な挙動と状況判断、正確なパスワーク、フィニッシュシーンへの飛び込みなど、香川には現状のドルトムントの主力選手にはない個性が備わっている。問題は、ファブレ監督が香川にどんな役割を求めるかだ

「9.5番(セカンドトップ)、10番(トップ下)の選手と見ている」

 これが香川に対する指揮官の見立てで、こうなると4-1-2-3、4-2-2のシステムではそのポジションが存在しない。

 ところで、香川は本当にインサイドハーフの素養を備えていないのだろうか。

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