なぜか、緊急配備は富田林署と近隣の警察署、隣接する、奈良県や和歌山県に対してだった。

 だが、樋田容疑者は大阪市内でひったくり事件を起こしていたのだ。

 14日には、兵庫県尼崎市でも防犯カメラに樋田容疑者らしき人物が映っていた。

 大阪府松原市の樋田容疑者の実家には、今も24時間体制で大阪府警の捜査車両が止まっている。

 樋田容疑者の小学校、中学校時代の同級生はこう証言する。

「昔の同級生に警察は軒並み、連絡をとって『樋田を知らないか』と聞いています。けど、樋田は高校に入ってグレて、ワルさをするようになり、同級生はまったくと言っていいほど、知らない。『同級生に聞いてもダメですよ。ワル仲間に聞いた方がいい』と大阪府警の人にいったら『そっちも聞いているが、手がかりがない。とにかく何でもいいから教えてくれ』と悲壮感いっぱいでした」

 取材班は大阪府警が樋田容疑者の実家でない、あるマンションをマークしている様子を確認した。樋田容疑者がかつて警察の「お世話」になった時に親しくしていた“ワルさ”の仲間の立ち寄り先だ。

「警察の人が毎日のように来て、防犯カメラのデータを持っていきますよ。外で張り込んでいるようだし、見ているなら防犯カメラのデータなんて不要なのにね。警察の人は『念のために』とか話していましたが、あんな頼りない感じじゃとうてい捕まりそうもない気がしました」

 そのマンションのオーナーは、あきれた表情でこう語る。

 お盆休みも返上して、多くの捜査員を投入している大阪府警。他の捜査にも影響があるようで捜査関係者はこう嘆く。

「最初は大阪市内のひったくり事件でマスコミの目を引き付けて、実は兵庫県尼崎市や西宮市あたりを、懸命に捜索していた。樋田の刑務所仲間などの関係先ですぐにでも捕まるようか勢いでした。それが、まったくダメで、あちこちの影響が出ています。事件捜査するにも人がいなくてと嘆きが聞こえてきます。これだけ捜査しても、樋田容疑者の行方はしれない。もう、どっかで事件でも起こしてくれなければ無理じゃないかという声まであがる始末です」
(取材班)

【訂正とお詫び】
 文中に、樋田容疑者が逃走した当日(8月12日)について、「おまけに富田林署の署長は夏休みで官舎にいなかった。休暇中の自宅から駆け付けたそうです」(前出・捜査関係者)という記述がありましたが、事実ではありませんので削除しました。大阪府警関係者と読者にお詫び申し上げます。(AERAdot.編集部)