「そう思う。この映画は社会問題に取り組む政治的映画ではないけれど、様々な問題(テーマ)に触れていると思う。社会的な映画ではないけれど、観客がどう反応するかとても興味が湧くわね」

――涙した人が多かったようですが。

「それは嬉しいわ。若い人も楽しんでもらえたのは嬉しい。ティモシー・スポールが演じるチャーリーは、妻の認知症というとても難しい問題をかかえている。それぞれすべてのキャラクターが自分の問題をかかえているの」

――夫の浮気に対する反応を、どう演じようと思いましたか?

「俳優として大切なことは、役柄に共感ことだと思う。好きになる必要はないけれど、理解することが重要だわ。キャラクターの心境を理解することが……。この場合は傷ついた心。特にこのキャラクターは、大勢の前で浮気が発覚して、恥をさらしたと思っている。一人で秘密を知ったのとは違う。信用を失ったという気持ちがある。それを少しずつ取り戻さなけらばならないの……。すべての例がそうだとは言えないけれど、彼女はずっと家庭を守り、夫のトロフフィーを長い間、磨いてきた。トロフィーというのは、ある意味で夫のエゴを意味していると思う。あまりやりがいのある事ではないわよね。それが悲しい。あの家を出て、彼女は何をすればいいのか?彼女は当惑するの。それはとても悲しいわ」

――悲しいシーンもありますが、楽しいシーンも満載ですね。例えばロンドンのピカデリー・サーカスで、皆で踊るシーンは見ごたえありですね。撮影のエピソードを教えてください。

「日曜の夜だったと思う。雨もしとしと降りだし、全部で6回ほど撮影したと思う。一度撮って、ホテルに戻って、というのを繰り返し、一晩まるまるかかった。12月だったの。ハムステッド・ポンド(公園にある池)での撮影は11月で寒かったわ。ピカデリーのシーンは、1度撮るたびにホテルに戻って待機した。というのも違った観客で撮りたかったから。同じ人が立っていると驚きがないでしょう?だから一度、見た人がいなくなるまで待ったの。人びとの驚きをカメラに捉えるために。とてもエキサイティングな撮影だったわ」

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