室屋は左右の両サイドをこなせるが、基本的にはFC東京で固定的に起用されている右サイドがメインになりそう。一方、同じく右サイドを主戦場とする伊東は、より前目のポジションを得意とするが、かつてサイドバックを本職としていたこともあり、豊富な運動量を求められるウイングバックも十分にこなせる。森保監督がこの2人をどう競争はさせるかは興味深いポイントになる。

 左サイドは車屋が本職のサイドバック、伊藤は本質的にサイドアタッカーで、右以上に特徴の違いが明確だ。そのため単純に競争というより、試合の時間帯や対戦相手との兼ね合いで使い分けをしやすい。

 もっとも、車屋は川崎フロンターレのチーム事情によりセンターバックでプレーする試合も増えており、3バックの左ストッパーと両睨みになりそうだが、今回は同ポジションの候補に槙野と佐々木というスペシャリストがいるので、まずは左ウイングバックでテストされると見られる。

 3バックの中央は東京五輪を目指すトゥーロン国際大会でも同ポジションで起用された冨安が確定的。遠藤は右ストッパーを得意とするが、チームバランスを考えると中央での起用がメインになるかもしれない。右ストッパーはロシアワールドカップメンバーに選ばれたものの出番がなかった植田と、惜しくも最終メンバーから漏れた三浦が競う構図になる。

 GKはロシアワールドカップメンバーの東口に、A代表経験も豊富な権田と、初招集ながら197cmという世界基準でもハイスケールなシュミットが挑む構図だ。森保ジャパンのA代表における組閣は正式に固まっておらず、今回は五輪代表のスタッフがそのまま森保監督とともにA代表を見る形になるが、特にGKは下田崇コーチの今合宿での評価が2試合での起用に大きく反映されるはずだ。

 9月の2試合、そして、おそらく10月に予定される2試合でも、森保監督は今回よりも実績のあるメンバーを混ぜながら気になる戦力候補を見極め、11月の段階で本格的にロシアワールドカップの主力を組み込んで、来年1月のアジアカップに向かう流れになるだろう。今回選出された選手とすれば、この2試合で大きくアピールすれば、当然、ここから先のベースメンバーに定着していける可能性が高まる。同じくワールドカップ明けのタイミングで来日するチリとコスタリカがどういうコンセプトとモチベーションで臨んでくるかは不明だが、新生・日本代表が試合で勝利を目指しながら、今後につながる良いテストにできることを期待する。(文・河治良幸)

●プロフィール
河治良幸
サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書は『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)、『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)など。Jリーグから欧州リーグ、代表戦まで、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHKスペシャル『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の“天才能”」に監修として参加。8月21日に『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)を刊行。