三塁打を放つ根尾昂 (c)朝日新聞社
三塁打を放つ根尾昂 (c)朝日新聞社

 9月3日に開幕する野球のアジア選手権に先立って行われた侍ジャパン壮行試合、高校日本代表と大学日本代表の対戦。夏の全国高校野球選手権で活躍した選手が多く出場することもあり前売り券は完売し、当日も約2万5000人の観客が神宮球場へ詰めかけた。また高校ジャパン、大学ジャパンともに10月のドラフト会議で指名が有力視される選手がめじろ押しということでネット裏には各球団のスカウト陣の姿も多く見られ、そのプレーの熱い視線が注がれていた。そんな注目の試合で甲子園を沸かせたスター候補生のプレーぶり、またそこから見えた課題について取り上げたい。

【写真】名将が選んだ甲子園ベストナインはこちら

 試合開始早々、そのスピードを見せつけたのがトップバッターの小園海斗(報徳学園3年・遊撃手)だ。大学ジャパン先発の田中誠也(立教大3年)の外角ストレートを打ってセカンドゴロに倒れたが、この時の一塁到達タイムは3.98秒をマーク。4秒を切ればプロでも俊足と言われており、いきなり見せたこの走塁に早くも観客はどよめいた。小園は続く第2打席でライト前ヒットを放ち、第4打席ではドラフト1位が有力視されている大学ジャパンのエース、松本航(日体大4年)の147キロのストレートをとらえてライトスタンドへのホームランを放ち、バッティングでも見事な活躍を見せた。昨年のU18ワールドカップにも2年生ながら選出されて4割近い打率を残している。ヘッドの走るスイングで木製バットへの対応も全く問題ないと言えるだろう。

 昨年、小園とともに高校ジャパンに選ばれたのが藤原恭大(大阪桐蔭3年・中堅手)だ。この日は第3打席にサードへの内野安打を放ったが、この時の一塁到達タイムは圧巻の3.83秒。第1打席のセカンドゴロでも3.93秒をマークしており、春先に故障した右膝が全く問題ないことを改めて見せつけた。この日はクリーンヒットが出なかったものの、第3打席の内野安打は津森宥紀(東北福祉大3年)のサイドから投げ込む140キロ台後半のストレートの後の抜いたボールに合わせたもので、対応力の高さが感じられた。ちなみに昨年のU18ワールドカップでも小園に次ぐチーム2位の打率.333をマークしている。気になったのは少しポイントが近いところ。145キロを超えるスピードに対しては差し込まれる場面が目立った。ただそれでもヘッドスピードは申し分ないだけに、ある程度慣れてくれば問題ないレベルと言えるだろう。

著者プロフィールを見る
西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

西尾典文の記事一覧はこちら
次のページ
最も強いインパクトを残した根尾昂