2年前にハノーバーからセビリアへ移籍し、リーガ・エスパニョーラ開幕のエスパニョール戦でいきなりゴールという華々しい一歩を踏み出しながら、直後に日本代表招集のために帰国している間に、ポジションを失った清武弘嗣(C大阪)のような例も実際にある。

 清武は2016年9月のロシアワールドカップ最終予選初戦・UAE戦(埼玉)に先発。本田の先制点をアシストする活躍を見せたが、左MFのポジションでは当時のヴァイッド・ハリルホジッチ監督の要求に応えられず、悔しい途中交代に終わっている。しかも日本はまさかの逆転負け。その悔しさを胸にスペインへ戻ったところ、8月末の移籍期限ギリギリのタイミングで加入した元フランス代表のサミル・ナスリが清武の地位を脅かしていた。

 当時のホルヘ・サンパオリ監督(アルゼンチン代表前監督)にとっては英語を操るナスリの方がコミュニケーションを取れるというプラス要素もあったのだろう。結果的に清武はこの後、徐々に出場機会を失い、わずか半年で帰国の道を選ぶことになった。その選択の全要因が代表招集だったとは言い切れないが、チーム作りの段階で10日間もクラブを離れたことが足かせになったのは紛れもない事実。他の代表選手たちもこうした危機に瀕しかねないのだ。

 日本代表を本気で強くしようと思うなら、試合に出て活躍する海外組を多くしなければならない。それは2010年南アワールドカップで活躍した元代表の松井大輔(横浜FC)も言っていることだ。足掛け11年間で海外4カ国・8クラブでプレーした百戦錬磨の男は、今日27日に上梓した自著「日本人が海外で成功する方法」の中でもそう強調している。だからこそ、香川の発言には、より多くの人々が耳を傾けるべきではないか。

 一部報道では、9月の代表2連戦は国内組と海外組の若手を主体としたメンバーで戦う可能性も浮上しているという。東京五輪世代の堂安律(フローニンゲン)や冨安健洋(シントトロイデン)、伊藤達哉(ハンブルガーSV)ら試合に出ている欧州組を呼んで試すこともインターナショナルデーでなければできないこと。今回はその方がベターかもしれない。

 ゼロからチーム作りを行っていく森保監督にとって難しい時代になったのは間違いないが、今後も海外でプレーする選手個々の事情を勘案することは重要だ。今回を手始めに、カタールまでの4年間を有効に使いながら、代表を強化していく方策をしっかりと見出してほしいものだ。(文・元川悦子)