最終回に鮮やかな大逆転劇を演じたのに、投手に代打を出してしまったことがアダとなって、無念の逆転サヨナラ負けを喫したのが、2006年の帝京。

 準々決勝の智弁和歌山戦は、8回を終わって4対8。9回1死一、二塁のチャンスも、次打者が三振に倒れ2死。敗色ムード濃厚になった。

 だが、4番・中村晃(現ソフトバンク)の右前タイムリーで1点を返すと、ここから怒涛の猛攻タイムが幕を開ける。

 塩沢佑太、雨森達也、我妻壮太の3連打で1点差に迫り、1年生・杉谷拳士(現日本ハム)の左前2点タイムリーで逆転。さらにこの回の先頭打者として代打で登場した沼田隼が前の打席で三ゴロに打ち取られた無念を晴らす左越え3ラン。打者11人の猛攻で8点を挙げ、12対8と突き放した。

 ところが、3人目の投手・大田阿斗里(元横浜‐オリックス)に代打を送ってしまったため、控え投手がいない。前田三夫監督は窮余の一策でセンターの勝見亮佑を4番手として登板させた。2年時にエースナンバーを着けたこともある元投手とあって、「何とか1回ぐらいは抑えられるだろう」との読みだったが、ストライクが入らず大誤算。連続四球のあと、4番・橋本良平(元阪神)に左越え3ランを浴び、たちまち1点差に……。

 次打者にも四球を出したところで、ショート・杉谷が緊急リリーフしたが、いきなり死球を与え、たった1球で降板。ここで背番号16の岡野裕也が6番手として登板し、ようやく1死を取ったものの、次打者に同点タイムリーを許したあと、連続四球で押し出し。痛恨のサヨナラ負けとなった。

「やはり投手は残しておかねばいけませんでした」(前田監督)

 両チーム併せて大会新の7本塁打が乱れ飛んだこの試合、勝ち投手になったのは、9回2死からリリーフし、打者を1球で打ち取った3番手・松本利樹。負け投手は杉谷。1球勝利&1球敗戦の珍記録となった。

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審判が守備妨害?!