センターバックスクリーンに飛び込む本塁打を放つ大阪桐蔭・根尾昂 (c)朝日新聞社
センターバックスクリーンに飛び込む本塁打を放つ大阪桐蔭・根尾昂 (c)朝日新聞社

 連日熱戦が繰り広げられている100回記念の全国高校野球選手権で、最大の注目は史上初となる2度目の春夏連覇を目指す大阪桐蔭(北大阪)だ。1回戦は作新学院(栃木)、2回戦は沖学園(南福岡)を危なげなく退け、順当に3回戦に進出を果たした。そんな逸材揃いのチームにプロ球団からも当然熱い視線が送られており、普段は全出場校が登場した時点で甲子園を去ることが多いスカウト陣も8月13日に行われた2回戦にも多くの姿を見せており、中には編成トップを派遣している球団もあったほどだ。

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 それだけ注目度の高い大阪桐蔭の面々でも現時点で、1位指名が確実視されているのが根尾昂と藤原恭大の二人だが、ここまでの2試合ではともに圧巻のプレーを見せている。根尾は1回戦では5番、ショートとして出場。第一打席では高めに浮いたチェンジアップを呼び込んでレフト線へ弾き返すスリーベースを放ち、先制のホームを踏んだ。また守っては7回にセンター前に抜けそうな当たりを華麗にさばき、最終回のピンチでも見事な守備範囲とスローイングを見せて併殺を完成。守備面でも成長を見せつけた。先発投手としてマウンドに上がった2回戦はスライダーの制球に苦しみ8回4失点と内容はもうひとつだったものの、最速は148キロをマーク。そして7回にはセンターバックスクリーンへ一直線で飛び込む一発を放ち、長打力も持ち合わせていることを改めてアピールした。現時点では野手としての能力を推す声が多いものの、根尾の最大の魅力はその底知れないポテンシャルにある。投げる、打つ、走る、一つ一つの動作に躍動感があり、今後どこまで伸びるのだろうかという夢を見させる選手であることは間違いない。

 一方の藤原も1回戦では第3打席で火の出るようなセンター前ヒットを放つと、1点リードで迎えた8回にはツーアウトランナー二塁のチャンスでライト前へのタイムリーを放ち、試合を決定づける仕事をやってのけた。更に凄かったのがこの時のランニングだ。作新学院のライトが打球を後逸すると、一塁を回ったところからグングン加速して一気にホームを陥れたのだ(記録はシングルヒットとライトのエラー)。そしてベース一周のタイムは14.60秒をマーク。クリーンヒットだったため一塁までは全力疾走ではなかったことを考えると、最初から全力で走っていれば13秒台も十分に狙えるだろう。これはプロでもトップクラスのスピードである。2回戦でも第2打席で同点のツーベースを放ち、第5打席では逆方向へのホームランとその打力を存分に見せている。また6回には捕手が捕球し損ねてホームインを許したものの、センターから見事な返球を見せて大観衆を沸かせた。外野手として必要な能力は全て備えており、選手としての完成度は根尾を大きく上回る。チームによっては1年目から外野手のレギュラー争いに加わっても全く不思議ではない。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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