ほかにも断崖絶壁、自然にできた洞窟や滝のすぐ真下……など、凡人の発想の斜め上をいく立地のレストランを数多く収録。いつかは行ってみたいと胸がときめく、旅の目的地になってくれる一軒に出会える。

■ページを開くだけで、マイナスイオンに癒される1冊
小林廉宣『森 PEACE OF FOREST』(世界文化社)

 森の輪郭と淡い空の色の境界線が曖昧になる、遙か先まで続くタイガの空撮から写真集は始まる。アマゾンの熱帯雨林や紅葉に染まったカナダの混交林の鳥瞰写真が続き、一転、視点は森の奥へ奥へと引き込まれていく。苔で覆われた倒木、せせらぎの水面、木々の隙間から降り注ぐこぼれ日、朝霧が立ち込める湖など、森がうちに抱える自然の風景を表情豊かに切り取る。

 撮影したのは写真家の小林康宣さん。「美しい森があると知れば、世界の果てでも訪ねていく」という言葉どおり、写真集には日本をはじめ24カ国の森が収められている。小林さんは撮影してきた森についてこう振り返る。「『いい森だなぁ』と思った場所には、その森と誠実に関わって生活する人たちがいる、というのがある」。

 コンクリートに囲まれた都会で暮らす身としては、日常生活は森からすっかり遠く離れてしまったように感じるが、日本は豊かな森に育まれた国。この写真集を開いて深呼吸すると、どこか懐かしい、森のにおいの記憶が呼び覚まされる気がした。