その結果、日本のP&Gは、20世紀末から21世紀初頭にかけて数々のヒットブランドの市場投入に成功し、幾多のブランドの育成や市場シェア成長を達成してきました(ジョイ、ファブリーズ、ボールド、レノア、ビダル・サスーン、パンテーン、h&s、パンパース、ウィスパー、SK-II、プリングルズ等々)。最近でこそ、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのV字回復の成功の陰にも本書の理論が数学的に応用されていることで徐々に知られつつありますが、日本のマーケティング学界や実業界では、バイロン・シャープ氏の理論はまだまだそれほど十分に認識されていないのが現状のようです。

 私はP&Gで約20年間マーケティングの実務家として販売量予測やブランドの育成に携わってきましたが、バイロン・シャープ氏の優れた法則や理論がほとんど認識されていないことを非常に残念に思っていました。本書は日本のマーケティングの実務家やマーケティングを学問として学ぶ方々にまさにお勧めの名著です。マーケティングの理論に完成はありません。時代とともにそして消費者とともに変化するものであり、常に発展の余地を残しています。バイロン・シャープ氏の理論はそこに一石を投じたのではないでしょうか?

学問はさまざまな知見がそれぞれの角度からぶつかり合って進歩して行くものです。本書がきっかけとなって、ブランド構築の議論がこれまで以上に盛んになることを願っています。(文/加藤巧、前平謙二)