池江璃花子 (c)朝日新聞社
池江璃花子 (c)朝日新聞社

 明日、8月9日から12日までの4日間、東京辰巳国際水泳場などで第13回パンパシフィック水泳選手権(以下パンパシ水泳)が開催される。1985年に東京で第1回がスタートしたこの大会は、元々五輪を含む世界大会で強さを見せ始めたヨーロッパ諸国に対抗するため、アメリカ、カナダ、オーストラリア、そして日本の4カ国が中心となり、環太平洋諸国の水泳のレベルアップを目的に作られた。

 歴史を振り返ると、このパンパシ水泳から多くのスターが誕生している。有名なところで言えば、スポーツ庁長官の鈴木大地氏も、第2回大会の100m背泳ぎで当時の日本記録を更新して銀メダルを獲得。翌年に行われたソウル五輪の金メダルへの勢いをつけた。16年前に横浜で開催された第9回大会では、北島康介が100m平泳ぎで金メダルを獲得し、この活躍が2004年アテネ五輪の100m、200m平泳ぎ2冠につながった。

 北島が優勝した第9回大会以来、4年に一度の開催となったパンパシ水泳は五輪の中間年に行われ、五輪に勢いをつける大事な国際大会と位置づけられている。

 そして今年、第13回大会でも新たなスターが誕生しようとしている。18歳の池江璃花子(ルネサンス/淑徳巣鴨)だ。

 今年4月、6日間の日程で行われた日本選手権で、連日、日本新記録コールを会場に轟かせる。出場した50m、100mの自由形とバタフライの4種目で、合計6回の日本新記録更新。大会最終日の50mバタフライを日本記録で優勝した池江は、「あっという間で、充実した楽しい試合でした」と笑顔で振り返った。

 一度勢いに乗ると、手がつけられなくなるのは若手選手の特徴だ。日本選手権以降も5月のジャパンオープン2018、6月のヨーロッパグランプリでも日本記録を更新。まさに破竹の勢いで日本記録を更新し続けている。

 池江がアスリートとして非常に優れているのは、その自己分析能力だ。初の五輪出場を経て迎えた2017年シーズンは記録が全く振るわず、池江の顔から笑顔が消えた。その原因は、五輪という最高峰の舞台で日本記録となる自己ベストを更新した100mバタフライで、5位入賞という結果を残したことで“満足感”をはじめて得てしまったこと。体力、泳力向上を図る冬場の泳ぎ込みの時期になっても気持ちが入りきらず、リオ五輪以前に比べて思うような練習が積めていなかった。そのツケが、夏のシーズンに出てしまったのだ。

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池江の目が覚めた!