「自分の苦しさよりも母の顔色を気にしていた」と女性は明かした(※写真はイメージ)
「自分の苦しさよりも母の顔色を気にしていた」と女性は明かした(※写真はイメージ)

「家事手伝い」「主婦」という肩書きがあるがゆえ、内閣府の統計から漏れていた既婚女性のひきこもり。その実態が、当事者団体である「ひきこもりUX会議」の調査で明らかになった。回答した143人の女性うち、既婚者は4人に1人。中でも、専業主婦(配偶者と同居し、収入がない人)がひきこもるようになった原因は、コミュニケーション不安(81%)、精神的な不調や病気(75%)、家族以外の人間関係(66%)だった。

【調査結果】夫以外の接し方がわからない…“既婚女性”のひきこもり実態

 サキさん(仮名、32歳)もひきこもり主婦の一人だ。高校1年生のゴールデンウイーク明けから不登校になり、定時制高校、通信制大学へと進学し、28歳で結婚。5年のひきこもりを経てアルバイトで働けるようになったいまも「ひきこもり主婦」と自認するのは、それができずに苦しんだ過去があったからだ。不登校新聞の編集長、石井志昂さんが思いを聞いた。

*  *  *

――ひきこもり始めたのはいつからでしょうか?

 高校1年生で不登校になったのを機にひきこもり当事者になりました。その後、定時制高校や通信制大学などに通い、28歳のときに夫と出会い結婚しています。

――ふだんはどんな生活を送っているのでしょうか?

 朝、起きたら家事をして、アルバイトがある日は働きに出ています。子どもはいないので育児はしていません。

――えっと……、ひきこもりでもなく、ふつうの主婦とも変わらない生活だと思うのですが?

 私もそう思っていました。でも、第三者から見れば、17年前の不登校から今に至るまで「ひきこもり」と「ふつうの人」を行ったり来たりしていました。「家からほとんど出ない」という定義がひきこもりならば、その期間は5年ほどあります。

 どんな状態であれ、生きづらさから解放されたことはありません。むしろ「自分はひきこもりだ」という事実から遠ざかろうとしていたことが、私の苦しんだ要因でした。

 もちろん、その背景には「母との関係」も大きなポイントでした。

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石井志昂

石井志昂

石井志昂(いしい・しこう)/1982年、東京都町田市出身。中学校受験を機に学校生活があわなくなり、教員や校則、いじめなどを理由に中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からNPO法人全国不登校新聞社が発行する『不登校新聞』のスタッフとなり、2006年から編集長。これまで、不登校の子どもや若者、識者など400人以上に取材してきた

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