各省で文書管理体制を若干強化することになっているが、そんなことをしてもほとんど意味はない。財務省など各省に「公文書監理官」をおいて審議官級のポストにするのだが、おそらくこれは他の仕事も兼務するお飾りポストになるだろう。

 不正を抑止するには、厳しい罰則も大事だが、何よりも、「捕まるかもしれない」という恐怖感を与えることが重要だ。同じ役所内で監視すると言っても、監視するのが大臣官房の幹部であれば、逆に現場は、そちらの「真意」を忖度して、文書を隠したり廃棄したりする可能性さえある。捕まえる役割の官房は、役所の利益を守る総本山であるから、そんなところに、役所が困ることでもどんどん摘発せよと言っても全くの無駄。「泥棒に泥棒を捕まえさせる」仕組みが有効に働くことは絶対にない。独立した第三者がチェックする仕組みが不可欠だ。

■「第三者のチェック」は焼け太りの理由に使われるだけ

 今回の見直しの中には、内閣府に「第三者的な立場からチェックを行う」体制を整備するという文言が入った。何かと思ったら、これまで特定秘密の管理のためにあった「独立公文書管理監」を審議官級から局長級に格上げし、その下に審議官を置くというのだ。そのうえで、増員して内閣府に「公文書観察室」を作るというが、これではただの焼け太りではないのか。同じ役人同士という意味でも問題だが、何よりも、加計学園問題で疑惑の中心になっている内閣府が信頼できる「第三者」で、厳格な監視役を担うとは笑い話以外の何ものでもない。

 少なくとも、刑事罰を導入して司直の手が入るようにしなければ、事態は全く改善しないだろう。

 その際、単に改ざんや廃棄を処罰対象とするだけではなく、作成すべき文書を作成しなかったことについても処罰できるようにしなければならない。なぜなら、今のままでは、官僚たちの間でこんな会話が交わされるようになるからだ。

課長:今回の件は「特例案件」ということで処理してくれ。

課長補佐:わかりました。行政文書には、形式的なことだけ書いて、あとは、全て個人メモ扱いにするということですね。国民にはすべて内緒ということで。

課長:おいおい、大きな声でそんなこと言うなよ。オレは、そんな意味で言ったんじゃないぞ。特例案件というのは、特に十分な注意を払って進めてくれという意味だ。それ以上でも以下でもない。

課長補佐:わかってますよ、課長。大丈夫です! 森友の近畿財務局みたいなことになったら大変ですよね。君もわかってるよな。

係長:当たり前ですよ。余計なことに巻き込まれたくないですからね。公文書に本当のこと全部書いたら、首がいくつあっても足りませんよ!

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