だけど、共感を得る、得ないに関係なく、感情を抑制しない人がエライ。そんな風潮がSNS時代にどんどん広がっている気がしてならない。いつの間にか「ぶっちゃけキャラ」などという言葉が、長所を表すようになっている。

 昨今話題の、剛力彩芽という人が痛々しい。

 こういう風潮に乗せられているとまでは言わないが、ぶっちゃけキャラになってしまっているのに、その自覚がない。いろいろ書いてはいるが、ようは恋愛感情を抑えきれないだけに見える。

 まだ25歳の女子だ。ましてや恋人は大金持ち。日帰りでロシアに連れていってくれる。上等な船で昼寝もしてくれる。毎日毎日、ドリカムの「うれしい!たのしい!大好き!」状態だろう。「きっとそうなんだっ、めぐりあえたんだっ、ずぅっと探してった、ひーとーにっ!」な感情が抑えきれないから、インスタをすぐ再開してしまう。

 まわりの大人は何とかしてあげられないのだろうか。

 店でランチパックを見るたびに、彼女の恋愛を思い出してしまう。ドラマや映画は、これからどうするのだろう。誰を演じても、ZOZOTOWNがチラチラするのは、女優としてはアリなのか。

 最後に綾瀬に戻るのだが、そんな時代にあって、彼女の演じる「感情抑えめ女子」「ぶっちゃけないキャラ」は実に貴重なのだ。

そしてこのほど知ったのだが、綾瀬という人はどうやらSNSをしていないらしい。「そうこなくっちゃ」と思う。

 綾瀬はるかの「抑制感」が好もしい。そんな、暑すぎる夏。(矢部万紀子

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矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

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