「イヤイヤ期」は自主性を伸ばすチャンス?(※イメージ写真)
「イヤイヤ期」は自主性を伸ばすチャンス?(※イメージ写真)

 親ならば、誰もが手を焼く、いわゆる「イヤイヤ期」。最近では、この時期を子どもの反抗期と呼ばず、別の呼び方にしたほうがいいのではないかという議論も起きている。「この時期を、『第一次自立期』と呼んではどうだろうか」。そう提案するのは、学習塾を主宰し、不登校児や学習障害児、非行少年などを積極的に引き受けて、生徒全員の成績をアップさせた経験を持ち、科学の視点で子育てにかかわる活動を続ける、異色の科学者・篠原信先生だ。

 長年、子どもたちの指導だけでなく、育児相談にも関わってきた篠原先生が、「イヤイヤ期」の捉え方について寄稿した。

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 2、3歳の頃に迎える第一次反抗期は、イヤイヤ期だとか「魔の2歳児」とか呼ばれて、恐れられて(?)います。しかし私は、自力で課題を克服しようという強い能動性を育てる大事な時期だと考えています。ちょっと極端な2つの例を紹介しましょう。

 その子は中学3年生のときにうちにきました。言葉をほとんど話せませんでした。成績は学年最下位。問われていることが理解できない、言語遅滞でした。そこで、お母さんに小さい頃の様子を尋ねました。

 テレビを見ている間はおとなしくしているので、お母さんはいつもその子をテレビの前に座らせて、家事を済ませていました。離婚したために自分が働いて生計を立てねばならず、仕事も家事も全責任を背負っている疲れもあって、その子は起きている時間、ほとんどテレビの前に置かれていました。

 テレビは言葉が話されているようで、情報が常に一方通行です。子どもの働きかけに何の反応も示してくれません。その子が言語遅滞をどう克服したかは紙面が限られているので記しませんが(詳しくは『子どもの地頭とやる気が育つおもしろい方法』に記載)、何かに働きかけ、その反応から学ぶという大事な時期、いわゆるイヤイヤ期に、テレビのような受け身の楽しみにどっぷりつかると、能動性が失われ、能力も育たなくなります。

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愛情たっぷりに育てればいいのかというと…