「昆虫を食べている」ことを家族や友人にカミングアウトするきっかけの一つとなったのが、2013年に国連食糧農業機関が出した論文だった。食糧危機に陥った際に虫が「たんぱく源」としてスーパーフードになり得るという内容に、メディアも注目。「週刊朝日」でも料理家の道場六三郎さんが昆虫を食材に至高の料理を作った企画を掲載した(13年4月12日号)。“料理の鉄人”をして「食材として十分使える。これは料理の革命だね」と言わしめるほど、昆虫食への風向きが変わった頃だった。

 国連の論文を後ろ盾に篠原さんはFacebookで昆虫食主義と告白。バッシングは予想していたが、「それ以上に批判が多かった」と話す。昆虫食そのものを否定するのではなく、単に「目立とうとしているだけ」と自分自身への批判もあった。

 しかし、批判の中にもいくつかポジティブな反響があった。一度食べてみたいと関心を持ってくれる人もいた。

 人に興味を持ってもらうには味も大切だと考え、調理法の研究を始めた。周りに人が集まりだすと、昆虫食そのものを知ってもらいたいという気持ちが強くなった。

 タガメやゴキブリなど、さまざまな昆虫を調理した。和食、中華、フレンチ、スイーツとあらゆるジャンルの料理に虫を掛け合わせる。活動する中で一軒のラーメン店からコラボの声がかかり、コオロギラーメンが生まれた。「コオロギが一番いい出汁がとれる」のだという。

 ラーメン1杯には約100匹のコオロギを使い、美味しいコオロギが良いと自ら育てる。美味しいコオロギとは何か。疑問に思った記者が尋ねると、「牛や豚と同じ」と篠原さんは笑う。

「土壌や光などいい環境やいい餌を与えれば、コオロギもちゃんと美味しくなるんです」

 店とのコラボが終わっても、コオロギラーメンを追求し続けた。「ラーメンは国民食で、ポップな存在。コオロギが使われていても違和感がないので、一番注目しています」

 メディアから取材を受けることも増え、AbemaTV「指原莉乃&ブラマヨの恋するサイテー男総選挙」に出演した時は、「地球と愛し合う大学生」として反響を呼んだ。

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話題になったからこそ感じる危機感