日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、2人の女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「HPVワクチン」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。
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2018年7月24日、イギリス政府は、ヒトパピローマウイルス(以下、HPV)が関連するがんを予防するために12~13歳の男児にHPVワクチンを接種することを決定した、と発表しました。
米国、ブラジル、カナダ、オーストラリアなど世界20カ国では、すでに男児への接種が推奨されています。今回の発表により、イギリスも男女ともにHPVワクチン接種を推奨する国の一つに仲間入りしたことになります。
「結局、HPVワクチンって打った方がいいの?」
最近、こうした質問を小学生の女の子を持つお母さまやお父さまから受けることが増えてきました。一方、HPVワクチンの未接種、子宮頸がん検診にそもそも行ったことがない、または診療時間中に仕事を休んでまで検査に行けない、などという同世代の女性が思ったよりも多いことを、外来診療を行う上で気づきました。
そこで、今回はHPVワクチンについて、世界における研究結果をもとにお話ししたいと思います。
ところで、皆さんはHPVが男女問わず感染するということを聞いたことがありますか。ウォマック・アーミー・メディカル・センターのJasmine J. Han医師らは、2013年から14年に行った調査において、米国を代表する18~59歳の男性1868人のうち、半数近い45%にHPV感染、25%に高リスクHPV感染を認めたと報告しています。
実は、性交渉の経験のあるヒトなら、誰でも一度はHPVに感染すると言われているのです。
HPVには、100種類以上の型があります。がんの原因になる高リスク型は少なくとも13種類あり、このうち、HPV16型と18型の2種類が、子宮頸がんの原因の7割を占めています。HPV感染の多くは免疫力によって排除されますが、持続感染してしまうとがんになるのです。