発信者が開示に同意すれば、情報は開示される。たとえ拒否した場合でも、プロバイダー側が、発信者による権利侵害が明らかと判断すれば開示される。開示されれば相手に連絡を取って交渉することになる。メール等のやりとりで解決せず、被害者が納得できない場合は、裁判という最終手段に委ねられる。情報が開示されなければ残念ながらそこまでだ。

■本誌記者も被害者に 開示請求の結果は?

 本シリーズの取材・執筆を担当してきた記者も、インスタグラムに投稿した写真を無断使用された。

 発覚したのは、取材の一貫で、「COPYTRACK」に、自身がインスタグラムに投稿した写真を登録したときのこと。ちなみに、COPYTRACKとは、インターネット上における写真の無断使用を自動検索し、発見後に不正使用者に対して事後ライセンス契約の交渉などを代行する、ドイツ発のオンラインサービスだ。

 登録と自動検索は無料のため、自分の写真をアップしておけば、自動的に無断使用を見つけてくれる。記者が登録したのは、登録の手順や使い勝手を検証するためのものであり、よもや無断使用を発見するとは思いもしなかった。

 無断使用されていたのは、記者が読んで面白かった漫画単行本3冊の写真。たわいもない、日常の写真である。無断使用したのは「漫画ネタバレ無料.net」というサイトで、この漫画のあらすじを紹介するページに使われていた。

 サイト内をくまなく調べたが、運営者の情報やメールアドレス、問い合わせ用のメールフォームなどはなかった。連絡先がわかればCOPYTRACKに無断使用者との事後ライセンス契約の交渉を依頼できるが、今回その手は使えない。そこで、漫画ネタバレ無料.netというドメイン名からサーバー会社(プロバイダー)を割り出し、発信者情報開示請求を行うことにした。

 自分が記事で書いたことを初めて実践してみたが、書類を準備してサーバー会社に送るまでは簡単だった。ところが数週間後にサーバー会社から通知書が送られてきた結果は「不開示」。その理由は、「権利が侵害されたことが明らかであると判断できません」。その根拠として、(A)該当画像が著作物であることの確認ができない(B)該当画像の著作物性が確認できない、と記されていた。

(A)について、記者は証拠として、写真投稿した自身のインスタグラムの画面を印刷して提出していたのだが、これだけではこのアカウントが本当に記者のものであるかどうかが確認できないという。(B)について、漫画単行本の表紙を並べて撮影しただけでは、記者の個性や創作性があるとは認めがたいという。

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