中島かずき/劇作家、脚本家、原作者。1959年福岡県出身。「劇団☆新感線」の座付き作家として『髑髏城の七人』『阿修羅城の瞳』などを手掛ける。近年はアニメ、特撮などの脚本家としても高い評価を得ている。※6月27日発売『真田太平記vol.13』にもインタビューを収録。好きな武将とその理由などが語られています
中島かずき/劇作家、脚本家、原作者。1959年福岡県出身。「劇団☆新感線」の座付き作家として『髑髏城の七人』『阿修羅城の瞳』などを手掛ける。近年はアニメ、特撮などの脚本家としても高い評価を得ている。※6月27日発売『真田太平記vol.13』にもインタビューを収録。好きな武将とその理由などが語られています

中島氏が初めて読んだというバットマン162話。日本の漫画で長期連載の定番は、記憶喪失や悪堕ちだが、まさかのゴリラ化
中島氏が初めて読んだというバットマン162話。日本の漫画で長期連載の定番は、記憶喪失や悪堕ちだが、まさかのゴリラ化

『ニンジャバットマン』作品情報/監督・制作はTVアニメ『ポプテピピック』で注目を浴びた水崎淳平と神風動画。脚本は『天元突破グレンラガン』『仮面ライダーフォーゼ』などでも知られる劇団☆新感線の中島かずき。Batman and all related characters and elements are trademarks of and (C)DC Comics. (C)Warner Bros. Japan LLC
『ニンジャバットマン』作品情報/監督・制作はTVアニメ『ポプテピピック』で注目を浴びた水崎淳平と神風動画。脚本は『天元突破グレンラガン』『仮面ライダーフォーゼ』などでも知られる劇団☆新感線の中島かずき。Batman and all related characters and elements are trademarks of and (C)DC Comics. (C)Warner Bros. Japan LLC

 もしもバットマンが戦国時代に存在したら?

【中島氏が初めて読んだというバットマン162話。まさかのゴリラ化】

 戦国大名と化して暴れまわるジョーカーたちヴィランとバットマンの戦い。カギを握るのはなぜかゴリラ。天才ゴリラが秀吉よろしく日輪の兜をかぶり、温泉ではニホンザルと一緒に湯につかる。そして最終決戦でも猿 と蝙蝠があんなことに……。

 実はこれ、現在絶賛公開中の『ニンジャバットマン』のあらすじだ。『真田太平記vol.13』(週刊朝日増刊)で、脚本を手掛けた中島かずき氏にバットマンの思い出とゴリラへの思い、漫画の未来について話を伺った。

*  *  *

『ニンジャバットマン』は、日本のスタッフが作るアメコミヒーロー作品です。せっかく日本で一からストーリーも作れる機会ですので、エンターテインメントとして、海外のファンにどう喜んでもらえるか。日本ならではのギミックを、バットマンというキャラクターの芯をぶらさずにどう描くかがテーマでした。

 ニンジャとバットマンというキーワードしか決まっていなかったので、たとえば日本のニンジャヒーローと共闘してもよかったんです。しかしやるからには、やはり直球勝負。真っ向から本家をちゃんと時代劇の世界にお呼びしようということは言いましたね。街並みとかも水崎淳平監督がしっかりこだわってくれました。いわゆる時代劇の中に、忽然とバットマンがいるっていうのが面白いわけですから。

 あと時代劇は町民や農民といった武士以外の存在もしっかり描かないといけないので、そこは意識しています。詳しくは言えませんが、今回一番描きたかったシーンなので、楽しみにしていただきたいですね。

 僕が最初に触れたアメコミのバットマンは、悪役に猿化ウイルスかなんかを注射されて、キングコングのようになってしまいエンパイアステートビルに登るという話でした。当時、六歳か七歳。アダム・ウエスト版のドラマがテレビ放映されていた時期です。

 それが自分の中での最初のバットマンなので、最初の刷りこみで、バットマンと猿がなんとなく近いところにあったんです。猿との親和性が高いというかね。

 50年ほど前、最初に僕がアメコミに触れた頃は、当時ドラマで放映されていたスーパーマンやバットマンのように、マントをつけたヒーローが悪をやっつけるというシンプルな勧善懲悪がアメコミだというイメージだったと思います。

 今は、マーベルやDCの映画のヒットのおかげでそのイメージもだいぶ変わってきてるとは思うけど、それでもそういうイメージを持っている人も未だに多いんじゃないでしょうか。

 どうしても、スーパーヒーロー物が多いですからね。お子様向けだと思われても仕方がない。

 正直、僕も、一時期はジャンルも表現形式も多彩な日本の漫画の方が表現手段として優れていると思っていた時期がありました。

 でも今は、アメコミの方が社会性というか、現状の問題にコミットする意識は高いんじゃないかと感じている部分はあります。マイノリティへの眼差しとか、移民問題とか、社会的、政治的な問題を積極的に作品の中に組み込んでいくなあと。

 それは日本の漫画とアメコミの作り方の違いかもしれません。

 日本の漫画は、基本的に一人の作家が全部描くから、より個人の作家性みたいなので勝負していく。個人の気分というか皮膚感覚でスタートして、作品と格闘していく中で、段々と自分のテーマを見つけていく。だから面白い作品はスタートからは想像出来ないようなレベルまで面白さが突き抜けていく。

 でも、アメコミは共同作業です。

 完全分業制で、ストーリーはシナリオライターが作り、絵もペンシラーがいて、インカーがいてと複数の人間が携わっている。作業としてはむしろアニメに近いかもしれない。関わる人間が多い分、あらかじめわかりやすい理念、テーマといった骨になるものがしっかりないと進められないんでしょうね。その分、社会的なテーマは処理しやすいのではないでしょうか。

 漫画的なコスチュームを羽織ったヒーローたちが極めて現代的なテーマを処理していく。9.11のときも追悼の作品がすぐに出版されて。あの時はヒーローたちが全員「無力だ」「俺たちがやってきたことはなんだったんだ」という話をさっそくやるわけですよ。あの感じって逆に日本の漫画とかも参考にできないかなと思う部分がありますね。

 脚本家としていうと、時代劇はやはり嘘がつきやすいんです。特に日本で活劇をやろうと思ったら、チャンバラがいいですし。社会的なテーマも、その時代に生きる人物をちゃんと書けば、ある種、今の時代を書くってことにつながりますからね。

 ですから、やっぱり一度はNHK大河ドラマに挑戦してみたいですね。。今、しっかりと長期で時代劇が書けるのは大河だと思うので、こういう取材時にはできるだけそう言うようにしています。