さらに追い打ちをかけるようにリンパへの転移が判明。抗がん剤による治療が決定した。

「転移がわかったときは今までの人生で最大に落ち込みました。『どうして、どうして、なんで私ばっかりこんな目に合うんだろう』と胸が押しつぶされそうで、涙が止まりませんでした。半ば自暴自棄になり、すべてにやる気をなくし、誰にも会いたくなかったです」

 そんななかでも、励まし続けてれくれた両親や友人、職場の上司、同僚の気持ちに応えようと、徐々に前向きな気持ちになり、「治ったら、今まで考えなかったこと、向き合わなかったことにも真剣に向き合ってみよう」と思った。そのひとつが結婚だった。

「20代、30代は仕事もプライベートも充実して、毎日が楽しく、結婚しなくても一生生きていけると思っていました。それが、2度目の乳がんを告げられたことで、『このまま命を終わらせてはいけないんじゃないか』と思い始め、今まで考えもしなかった結婚についても考えてみようと思うようになりました。当時、つき合っている彼はいなかったんですけどね(笑)」

■いつもさりげなく励まし、支えてくれた同僚が今の夫

「抗がん剤治療が終盤にさしかかった頃、ある同僚がよく食事に誘ってくれるようになったんです。いつもさりげなく体調を気遣ってくれ、私の愚痴も黙って聞いてくれた同僚。それが今の夫です。でも、そのときは、まさか自分がこの人と結婚するなんて思ってもみませんでした。『親切な人だなぁ』と思ったぐらいで、恋愛感情もありませんでしたから」

 小田さんと彼は別の部署でそれぞれが課長という役職に就いており、ミーティングなど仕事のやり取りだけという間柄だった。

「もちろん、顔も名前も知っていましたが、ふたりで食事に行ったことはありませんでした。ですから、最初、誘われたときには、びっくりしました。そして、何回かふたりで食事に行き、いろんなことを話すうちに、『なんてやさしく、思いやりの深い人なんだろう』と思うようになり、『また一緒にごはんを食べたいな』という気持ちに自然となっていきました」

 でも、そのときも恋愛対象として、ましてや結婚相手として考えてもいなかったという。しかし彼の方は違った。小田さんとの結婚をしっかり考えていたのだ。

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プロポーズされるが、迷い…