注意すべきは「戦意をくじくこと」と、「従順になること」は別であること。難しいところだが「こちらの戦意」も「怯えている様子」も厳禁。それらは相手を調子づかせかねない。

 強い武器を持った相手、そういう人には体格も護身術もあまり役に立たない。まずはそういう状況にならないように自分が存在する時間と場所に気を付けることが最初の一歩だが、そういう状況に陥ってしまったら仕方ない。「まずは相手の戦意をくじくこと」「間違っても高揚した戦意を高めないこと」が大事になる。そしてそのスキにその場をスーっと逃げるのだ。

 ビジネスシーンにもぴったり当てはまる。まずは強い力を持った上司などに絡まれるシーンに陥らないよう気を付けるべきだ。しかしそういうシーンにもう陥ってしまったら、自分の力では勝てないし、状況を収めるのも大変だから、「とにかく相手の戦意をくじく」しかない。普通の笑顔や会釈等、意外な行動で高揚した戦意の手鼻を「あれれ?」とくじくのだ。そして逃げる。

 間違っても護身術や体格で相手を脅さないこと、つまりビジネスシーンでいえば、論理や正論で立ち向かおうとしないことだ。

 相手次第では、護身術や体格差、つまりロジックや正論で、一度くらい抑えられるかもしれないが、その後、執拗に狙われるかもしれない。その一度間違った成功体験がつぎなる災難を呼ぶかもしれない。

 いかに相手に100パーセント落ち度があっても「だからあなたはこうなんだ」といった、“言っちゃあオシメよー系一言”は絶対言わないことだ。殴りあった後で肩組んで笑うとか青春ドラマみたいことはまず起きない。

 怯えず戦意を押し隠して、相手の戦意をくじく技術。笑顔で挨拶そして他愛もないフニャフニャ言うコミュニケーション。相手の顔がピキッとなっている時こそ、こんにちは!いつもありがとうございます! 今日もいい一日を! といった具合だ。

 敵意や怯えがどこかに残っていると逆効果ですよ。難しいですが、頑張りましょう!

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田村耕太郎

田村耕太郎

田村 耕太郎(たむら・こうたろう)/国立シンガポール大学リー・クアンユー公共政策大学院兼任教授。ミルケン研究所シニアフェロー、インフォテリア(東証上場)取締役、データラマ社日本法人会長。日本にも二校ある世界最大のグローバル・インディアン・インターナショナル・スクールの顧問他、日、米、シンガポール、インド、香港等の企業のアドバイザーを務める。データ分析系を中心にシリコンバレーでエンジェル投資、中国のユニコーンベンチャーにも投資。元参議院議員。イェール大学大学院卒業。日本人政治家で初めてハーバードビジネススクールのケース(事例)の主人公となる。著書に『君は、こんなワクワクする世界を見ずに死ねるか!?』(マガジンハウス)、『野蛮人の読書術』(飛鳥新社)、『頭に来てもアホとは戦うな!』(朝日新聞出版)など多数

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