■新しいチームの“顔”は誰だ?

 前線の構成は1トップ・2シャドーが基本だ。恐らく日本の選手層から見れば、2シャドーのポジションは最大の激戦区になる。名前を挙げるだけで両手の指では足りないような人材の候補がいる。一方で、1トップは必ずしもポストプレーヤーとはならないのが森保監督のチームの特徴かもしれない。広島時代は佐藤寿人や浅野拓磨といった、最終ラインの背後に抜け出すのが得意な選手を起用したこともあれば、もちろんピーター・ウタカのような強さのあるタイプを起用したこともある。対戦相手や状況次第で柔軟に構成を変化させてくるのが、森保監督の前線の選手起用だと言える。

 いずれにせよ、仮にダブル森保ジャパンがスタートするならば、最初の2年間はA代表と五輪の両にらみになる。若手に対して情熱的な指導を行って成長させてきた指導者だけに、親善試合やアジアカップに五輪世代からも選手を呼んで、A代表のレベルを経験させることで選手の成長を促すことも考えられるだろう。そして、東京五輪世代のレベルが納得できるレベルまで上がってくれば、2022年のカタールW杯に少なくない人数がチャンスを得ていく可能性も十分にある。

 ロシアW杯の日本代表チームは、平均年齢が出場6大会中で最も高かったことも話題になった。主将を務めた長谷部誠や、長らく代表の“顔”であった本田圭佑も代表チームを去り、全体的な世代交代のタイミングになるのは間違いない。そうした意味でも、森保監督がアンダーカテゴリーとの兼任をすることで、より世代間の競争が激しくなることも期待される。

 後は、そうしたタイミングでチームを任せることを、日本サッカー協会がどのように捉えているか。代表監督を選ぶとき、任命する側はうまくいかなかった時に判断するタイミングは想定しておくべきだ。半年後のアジアカップの時点でハッキリとした結果を求めるのか、それとも五輪をチェックポイントにするのか、それともW杯のアジア予選で黄色信号が点るようなことになるまで我慢するのか。また、これでは難しいと考えるタイミングが早期に訪れた場合、五輪代表の監督は継続させるのか。

 1チームがうまくいくだけでなく、同時に2チームを成功させなければいけないのだから、うまくいかない可能性も少なからずある。常套句である「成功すると信じてサポートする」という言葉の裏側に、どれだけのリスクヘッジや考えがあるかどうかも、この兼任監督が実現した時に成功できるかどうかのカギになるはずだ。