鉄道写真家への逆風 SNSにある「正義の鉄槌」と「肖像権アレルギー」とは? (2/2) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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鉄道写真家への逆風 SNSにある「正義の鉄槌」と「肖像権アレルギー」とは?

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吉川明子dot.#アサヒカメラ
写真左から。大西みつぐさん(写真家)、塚崎秀雄さん(東京カメラ部代表取締役)、三平聡史さん(みずほ中央法律事務所代表弁護士)、佐々木広人(アサヒカメラ編集長)※撮影/小原雄輝(写真部)

写真左から。大西みつぐさん(写真家)、塚崎秀雄さん(東京カメラ部代表取締役)、三平聡史さん(みずほ中央法律事務所代表弁護士)、佐々木広人(アサヒカメラ編集長)※撮影/小原雄輝(写真部)

「盗撮」の定義と肖像権侵害について(協力/三平聡史弁護士、図版作成/アサヒカメラ編集部)

「盗撮」の定義と肖像権侵害について(協力/三平聡史弁護士、図版作成/アサヒカメラ編集部)

佐々木 この鉄道写真の件も同じようなものですね。

塚崎 特に悲しいのが、きっかけは善意からでも、お互いを牽制しあい、結果的に、作品を発表しにくい環境をみんなでつくり上げてしまうことがあるというわけです。あと、こういう炎上ものがあるといろんな人が乗っかってきて、餌のように消費されて終わってしまうこと。こうした議論が次につながって、撮影をとりまく環境が少しでも改善されるのならまだしも、何も生み出さない。お互いを傷つけあってダメージは大きいくせに、リターンは少ないのです。

大西 改めてこの写真を見ると、浴衣を着た女性の後ろ姿も相まって、非常にいい情景です。それなのにマイナスに取られる場合もあるから注意しなくてはいけないわけで。

三平 そう考えると怖いですよね。写っている人は後ろ姿だし、肖像権侵害もありません。法的な問題もなく、ただ趣味で撮っただけでめちゃくちゃたたかれたわけですから。そんなことされたらへこみますよね。撮影者は写真をやめようと思うかもしれない。

塚崎 東京カメラ部で、そのような撮影者たたきや誹謗中傷コメントがあったら、すべて削除します。目に余る場合は発言者をブロックすることもあります。

佐々木 SNSでは気軽に写真をアップできるぶん、無防備な状態で突然見知らぬ人にたたかれることもあります。いきなり殴られたら痛いのは当然です。そこで、撮影者も写真を発表する際に、ある程度の覚悟があれば、たたかれても反論できるかもしれないし、必要以上に傷つかなくても済むものでしょうか?

大西 僕は写真家で、ストリートも撮っています。だから、不測の事態に直面しても、それにきちんと対応しなくてはならないという責任感を持っています。ただ、写真を趣味にしている一般の人はそこまでじゃないかもしれない。

塚崎 大西さんや、ストリートスナップを撮影している人は、みなさん覚悟をお持ちです。警察に突き出されたり、下手すると殴られたりしながら撮っていますから。でも、スナップは覚悟を持っている人しか撮れないかというと、そんなことはないはずです。せっかく写真が好きで、楽しんで撮っていた人が、誰かにたたかれたことで写真を大嫌いになることだけは避けたい。東京カメラ部は、写真を発表する人で成り立っている場ですから、そういう人たちに恩があります。その恩を返す意味でも、彼らを誹謗中傷から守ることは義務だと思っています。それに、覚悟がある人しか撮れないとなると、スナップ写真は先細りする一方。覚悟のありなしを問わず、自由に撮影でき、発表できる場が必要なんです。

【座談会メンバー】
◯大西みつぐ(おおにし・みつぐ)
写真家。第22回太陽賞、第18回木村伊兵衛写真賞を受賞。日本写真協会会員、大阪芸術大学客員教授、ニッコールクラブ顧問。

◯三平聡史(みひら・さとし)
みずほ中央法律事務所代表弁護士。同事務所のホームページでも撮影と法律に関するコラムを執筆している。

◯塚崎秀雄(つかざき・ひでお)
日本最大級の写真投稿SNS「東京カメラ部」を運営。東京カメラ部株式会社代表取締役社長。

◯佐々木広人(ささき・ひろと)
2014年4月からアサヒカメラ編集長。

(構成/吉川明子)

※アサヒカメラ特別編集『写真好きのための法律&マナー』から抜粋


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