三平 でもこの場合、公道の人目につくところで着替えをしています。仲間内のルールを通りすがりの人に強制するのもどうかと思いますね。

佐々木 僕も現場に行きましたけど、歩いていて普通に見える場所でした。あとで調べると、このコスプレ大会では着替える場所が用意されていなかったようです。

塚崎 コスプレーヤーの掟として、家から会場までコスプレで来てはいけないんですよね。しかも、会場近くのトイレで着替えるのも迷惑がかかるのでNGのはず。だから、主催者側の対応にも問題があったと思います。彼らが独自ルールを作るのは、自分たちが好きなコスプレを守るため。人に不愉快な思いをさせたり、迷惑をかけたりすることで、活動できなくなることを恐れているからです。だから、この写真で炎上したのは、自分たちが守ろうとしているものを傷つけられたと感じたからかもしれませんね。

大西 たまたま通りかかった撮影者だと、コスプレ大会のマナーやルールを事前に知ることもできないですから、状況から判断するしかありません。コスプレに限らず、今撮ってもいいかどうかというせめぎあいは難しいものです。以前、ハワイアンフェスティバルでフラダンスの出場者を撮影したことがあるのですが、参加者に名刺を渡して目的を伝え、コミュニケーションを取ることで、フラダンスの本番以外の準備の様子や、自然な写真を撮影することができました。だから、コスプレであっても、やり方次第で出番を待っているときの情景も撮れると思うんです。

佐々木 この写真は偶然撮れたそうです。

三平 逆に事前に声をかけていたら、この場面は撮れなかったでしょうから、その兼ね合いは難しいところです。

【座談会メンバー】
◯大西みつぐ(おおにし・みつぐ)
写真家。第22回太陽賞、第18回木村伊兵衛写真賞を受賞。日本写真協会会員、大阪芸術大学客員教授、ニッコールクラブ顧問。

◯三平聡史(みひら・さとし)
みずほ中央法律事務所代表弁護士。同事務所のホームページでも撮影と法律に関するコラムを執筆している。

◯塚崎秀雄(つかざき・ひでお)
日本最大級の写真投稿SNS「東京カメラ部」を運営。東京カメラ部株式会社代表取締役社長。

◯佐々木広人(ささき・ひろと)
2014年4月からアサヒカメラ編集長。

(構成/吉川明子)

※アサヒカメラ特別編集『写真好きのための法律&マナー』から抜粋