顔写真と個人情報を取り巻く環境を改めて整理してみると、法律の理解不足が根底にあることが見えてくる(※写真はイメージ)
顔写真と個人情報を取り巻く環境を改めて整理してみると、法律の理解不足が根底にあることが見えてくる(※写真はイメージ)
個人情報保護法と写真の重要ポイント(アサヒカメラ編集部作成)
個人情報保護法と写真の重要ポイント(アサヒカメラ編集部作成)

 スナップ撮影愛好家にとって今や肖像権問題は喫緊の課題。とりわけ問題を面倒にしているのが、肖像権に対する無知と誤解だ。さらに事態をややこしくさせるのが個人情報保護法の改正である。といっても問題の本質は法の改正そのものにあるのではない。改正に伴う、萎縮ムードの高まりが懸念されるのだ。アサヒカメラ特別編集『写真好きのための法律&マナー』では、改正個人情報保護法と肖像権問題を特集。混同しやすい「個人情報の保護」について解説する。

【個人情報保護法の重要ポイントがひと目でわかるチャートはこちら】

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 2005年の個人情報保護法施行後、「個人情報」への過度な配慮がしばしば問題となっている。「個人情報の保護」を理由に、本来必要な情報が開示されなかったり、本人または保護者の承諾なしに顔写真の撮影や掲載ができなかったりするケースだ。

 同法の目的は「個人の権利・利益の保護」であり、個人情報の流出や悪用により、不利益を被ることは避けなくてはならない。一方で、「個人情報の保護」という大義名分が独り歩きし、過剰反応を引き起こしていることについては、冷静な対応が必要だ。

 みずほ中央法律事務所代表の三平聡史弁護士は、こう指摘する。

「個人情報保護法の名前を聞いたことはあっても、どういう法律なのかを正しく理解している人はそんなに多くありません。行政機関が情報公開制度による開示請求の非開示理由の一つとして『個人情報の保護』を過剰に使っていることはよくある話ですし、日常生活で一般の人が過剰に反応したり、誤解に基づいた利用をしたりしてもおかしくはありません」

 たとえば、街でスナップ写真を撮影していて、写り込んだ人にとがめられた場合、「顔写真は個人情報なので勝手に撮らないでください」と言われる可能性も十分にあるということだ。

「そもそも個人情報保護法の対象外ですから、拒否理由は正当なものではありません。もちろん、肖像権に配慮する必要はありますが……」(同)

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報道目的は個人情報保護法の適用除外