■松坂世代のプロ監督第1号

 新監督に就任することになった大西宏明は、堺市に生まれ育ち、中学では「堺ビッグボーイズ」に所属していた。後にDeNA・筒香嘉智らも生む名門チームだ。球団運営の母体「つくろう堺市民球団」の代表を務める夏凪一仁も、中学時代には大西と一緒に、堺ビッグボーイズでプレーしていた経験がある。

 そこから名門・PL学園に進学した大西の名を一気に全国区にのし上げたのは1998年、高3の夏のことだった。甲子園での準々決勝。横浜対PL学園の延長17回の激闘だ。

 5番の大西は、松坂からヒット3本を放った。そのシュアな打撃と、外野手としても俊足、広い守備範囲で注目され、近大を経てプロ入り。近鉄からオリックス、横浜、ソフトバンクと4球団でプレーした。

 NPB12球団でプレーした「松坂世代」は93人を数える。大西はもちろんその中の1人だ。今年6月に、楽天・梨田昌孝監督が成績不振を理由に辞任。その後を受け、38歳で「監督代行」に就任した平石洋介も、大西と同じPL学園出身。チームの主将として延長17回の死闘を演じた一人だ。ただ、平石の肩書には、あくまで「代行」がついている。現時点では正式な監督ではない。

 つまり、独立リーグとはいえ、プロの「監督」に就任することが決まったのは「松坂世代」の中でも、大西が第1号なのだ。

 38歳での監督就任。同級生には、松坂をはじめとした、現役選手もまだまだ存在する。松坂には「ベテラン」の称号がつき、大西や平石は「若き監督」と評される。

 何とも、不思議な使い分けではないか。

 閑話休題―。

 正式な球団名は年内に公募する方針だが、この「つくろう堺市民球団」は関西を基盤とするベースボール・ファースト・リーグ(BFL)に所属する。BFLは、国内の他2リーグ、四国アイランドリーグプラスと、ルートインBCリーグとは一線を画しており、日本独立リーグ機構にも加盟していない。文字通り“独立”したリーグである。

 そのため、既存のルールには全く縛られない。BFLの兵庫球団の2軍は兵庫・芦屋大と連携。芦屋大も全日本大学野球連盟には加盟しておらず、プロ・アマの交流に関する制限も全くないため、実力次第では大学生がプロの独立リーグのゲームに出場することができ、BFLの公式戦で実際にプレーしている芦屋大生もいる。

 今年からは、兵庫球団が通信制高校の大阪・向陽台高と、和歌山球団が通信制の鹿児島・神村学園とそれぞれ提携、高校生の育成組織を傘下に置いての活動もスタートさせている。つまり、プロを頂点として、その下に大学、高校と連なっていく「ユースシステム」を採っているのだ。

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日本球界にはない先進的な取り組み