次に、改正点について整理していきたい。

 第一に、「個人情報の定義の明確化」がある。個人情報の範囲自体は変わらないものの、情報の性質上、特定の個人を識別することができるものを新たに「個人識別符号」として定義した。そのうちの一つが「身体の特徴を電子計算機のために変換した符号」。DNA、顔、虹彩、声紋、歩行の態様、手指の静脈、指紋・掌紋などが含まれる。

「ATMに指静脈認証が導入されたり、歩き方や歩幅などの特徴から個人を割り出したりするなど、テクノロジーの進化によってさまざまなことが可能になってきました。また、膨大なパーソナルデータが収集・分析されるビッグデータ時代への対応も求められていました」(同)

 前述のとおり、法律の適用範囲の拡大も大きな改正点だ。かつては法律の適用対象は5001人分以上の個人情報を取り扱う事業者に限られていたが、個人情報の数にかかわらず、すべての事業者が適用対象となった。これは、個人情報を利用する事業が営利か非営利かは問われないため、町内会・自治会、学校の同窓会などにも、個人情報を取り扱う際のルールが義務づけられることになった。

 となれば、写真家はどうなのか。とりわけフリーランスのカメラマンや職業写真家は仕事や作品制作の一環で、ポートレートやスナップ写真など人の顔が写っているものを日常的に撮影している。顔写真が個人情報であるならば、今後、これらの写真をどう扱うべきなのか。

「顔写真は個人情報ですが、同法が指す〝事業者〞とは、個人情報をデータベース化して事業に利用している事業者のこと。ですから、ポートレートやスナップ写真など、人の顔が写った画像データをたくさん持っていたとしても、データベース化して事業に活用していなければ、同法適用の範囲外です」(同)

 同法の全文に目を通してみると、「個人情報取扱事業者」と明記されている。だが、一般的には「事業者」と略されることが多いために、誤解が生じやすくなっているのだ。

(文/吉川明子)

アサヒカメラ特別編集『写真好きのための法律&マナー』から抜粋