1点を追う9回2死から自殺行為とも言うべきスクイズを試みてゲームセットという珍事が起きたのが、2005年の千葉県大会1回戦、鶴舞桜が丘vs佐倉西。

 初回に2点を先制した鶴舞桜が丘は、4回にも1点を加え、3対0とリードしたが、その裏同点に追いつかれ、6回にタイムリーなどで2点を勝ち越された。

 7回にもエラー絡みで2点を失い、3対7と点差を広げられて迎えた9回表、鶴舞桜が丘は最後の粘りを見せる。敵失や四球で1死満塁のチャンスをつくると、6番・長谷川雄基の中前タイムリーなどで3点を返し、6対7と1点差。なおも2死二、三塁と一打逆転のチャンスだったが、ここで打席に立った途中出場の8番打者・鶴岡麻人に対し、なぜかベンチからスクイズのサインが出た。

 この日安打を放っている鶴岡は「本当にバントでいいの?」と目を白黒させたが、「監督を信じよう」と投前に転がし、スリーアウトになった。

 ところが、ゲームセットになった直後、ベンチから中村誠監督が飛び出してきて言った。「まだツーアウトだろ?」。なんと、アウトカウントを勘違いしていたのだ。

 自らのうっかりミスで試合に負けたことを知った中村監督は「選手に謝りたい。こんなミスは33年間(の監督歴)で初めてです」と肩を落とした。

 だが、この事件がチームの絆を強めた。翌年夏はエースが6回に逆転打を放った直後に負傷退場というアクシデントを全員野球で乗り越え、甲子園出場歴のある市銚子に3対2で勝利した。

 審判がルールを間違えたために1時間19分も試合が中断する騒ぎになったのが、2011年の広島県大会準決勝、広島新庄vs崇徳。

 4対4の延長10回、崇徳は先発の阪垣拓哉が先頭打者に内野安打を許し、無死一塁になったところで、2番手・松尾達宜をリリーフに送り、阪垣をレフトに回した。松尾が次打者に送りバントを決められて1死二塁になると、再び阪垣がマウンドに上がり、松尾はレフトに回った。ここまでは良かった。

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没収試合を適用するかの論議が勃発