もう1つの選択肢は、アジアカップまでの半年間と、その次の3年半を完全分断して考えてしまうやり方だ。今から西野監督を翻意させることは難しいかもしれないが、例えば東京五輪に向けた代表チームを率いる森保一監督に、アジアカップまでという約束で兼務してもらうという考え方はできるかもしれない。それは、当然ながらアジアカップが終了した後に現在Jリーグのチームを率いている監督を代表監督に据えることが前提だ。つまり、やや強引にではあるがシーズン制の違いをそうやって乗り越えてしまうということだ。

 その場合は日本人でも外国人でも、多くの候補になる監督がいるだろう。タイトル獲得数を見れば、FC東京の長谷川健太監督は有力な選択肢になり得るし、初出場のフランスW杯で「10番」をつけたジュビロ磐田の名波浩監督に任せるというのは、1つのロマンであり、日本代表の系譜を色濃く感じさせるものだ。日本人をよく理解する外国人監督という意味では、コンサドーレ札幌のミハイロ・ペトロヴィッチ監督や、浦和レッズのオズワルド・オリヴェイラ監督の名前も挙がるかもしれない。

 また、そのタイミングであれば広州富力を率いる名古屋で活躍した経験を持つドラガン・ストイコビッチ氏など、現在は中国のクラブを率いている有力な指揮官に打診することも可能だろう。もちろん、その時点で国際的に有力な監督がフリーであるなら、そちらに動くのも手だ。要点は、半年間タイミングを変えるだけで選択肢は一気に広がるということだ。

 確かに、日本代表チームの監督を半年間の腰掛けで任せることの是非はあるだろう。しかし、この夏のタイミングで満足のいく指揮官を見つけられなかったのなら、アジアカップを多少の犠牲にしても決断を遅らせる選択肢を取る勇気も欲しい。かつて開催されていた大陸間王者が集まるコンフェデレーションズ・カップも廃止が決まり、アジア王者の称号の先につながるものはなくなった。FIFAランキングのことを考えれば重要な大会であるにしても、4年後のW杯に向けて確信的に任せられる指揮官を見つけることとの天秤にかければ、後者が重要ではないだろうか。

 いずれにせよ、今月中には日本サッカー協会の技術委員会で結論が出ると見られている。わずか数週間で場当たり的な決着を急ぐよりは、じっくりとした方向性の策定と指揮官選びをした方が良い。それが求められるほど、このロシア大会はメンバーリストを見た時に大きなサイクルに終止符が打たれた場面だからだ。