カテゴリーは違うが、日本の女子代表なでしこジャパンは、2011年ドイツ女子W杯で優勝した。その当時の佐々木則夫監督は、約3年半を過ごしたチームを世界一に導いた。その1年後にはロンドン五輪で銀メダルも獲得した。15年カナダ女子W杯でも準優勝したが、16年のリオデジャネイロ五輪アジア予選でまさかの敗退。そこで指揮を終えることになった。結果的に、8年強の長期政権だった。

 このチームがロンドン五輪以降に指摘され続けたのが、世代交代の失敗だった。実際のところ、起用する、あるいは抜擢するに足る若手選手がどれほどいたのかという現実問題はあるにしても、自分で作り上げたチームのバランスを変える、あるいは中心選手を入れ替えていくというトライが見えたかというと疑問の余地は小さくない。長い年月を過ごすだけでなく、自分で自分のチームに変革をもたらし、世代交代を含む刺激を与え続ける。これが、長期政権の難しさの最たるもので、監督に求められる資質でもある。

 そうした意味でも、最初から長期政権を前提に監督を選定するのはリスクが大きすぎると言えるだろう。あくまでも、好成績、説得力のあるサッカーの内容が伴った時に次の任期も託すという決断があり、その積み重ねの末、結果的に長期政権が生まれたというのが妥当だ。

 しかしまずは、そうした戦略的な監督選定や軌道修正を可能にするタイミングを作ることだ。理想は、欧州選手権や五輪が開催される前後で、その後の任期について判断できる試合や大会を設けること。それこそ、欧州選手権の開幕前に、出場する中の強豪を含む4チームほどとマッチメークをして、その結果と内容を問うというものでも良いかもしれない。方法論は別にして、2年ごとに判断のタイミングを作ることで代表チームの構築にも目標とメリハリが生まれるだろう。

 長期政権にはリスクがあるからこそ、4年スパンでのチェックでは緩い。漫然とした親善試合の連続ではなく、適切なチェックポイントを設定するからこそ、軌道修正をしながらの長期政権が生まれる可能性はある。1人の監督が長くチームを率いることで得られるメリットは確かにあるが、日本がその仲間入りをしようとするならば、まずは、そのチェックポイントとスパンを明確にすることが必要だと言えるだろう。