最近、テレビで池の水を抜く番組が流行っている。池を綺麗にするとともに、数少ない在来種を外来種から守る役目も担っているようだ。

 そうした動きを、早速、小説に取り入れた作家がいる。これまでにも数々の社会問題を提示し、重苦しい事件でも軽妙なタッチで小説に仕上げている、六道慧さんだ。

 いわゆる「かいぼり」を、新刊『警視庁特別取締官 デラシネの真実』に登場させた理由は何なのか?

――そもそも、社会問題を小説に取り入れる理由は?

 私はネットを使わないので、情報はすべてテレビと新聞によっています。毎日、色々な事件が起きていますが、例えば、凄惨な殺人事件の記事を読んで、それで終わりにしたくない。同じようなことが、明日、自分の身に起きても不思議ではないんです。他人事、非日常的だと思っていることが、実はそうじゃない。今、この時にも、誰もが危険と隣り合わせだということを訴えていきたいと思っているんです。

――「かいぼり」に興味を持ったきっかけは?

 静岡大学の加藤英明先生がテレビに出演されているのをみたことがきっかけです。まさしく、池の水を全部抜く番組で、もう3年ほど前だったでしょうか。外来種がものすごい勢いで日本に入り込んでいることは話には聞いていましたが、実際に目で見てびっくりしました。

 翌日、自宅の近辺で「かいぼり」をやっているところがあるのかどうか調べてみました。そうしたら、調布の深大寺植物公園でもやっていて、かなり人が集まるようになっているということでした。「かいぼり」をしているとき、泥の中にヤゴがいるのを参加している子供が見て、興味を持ち始めているのが良いなと思いました。作業を通じて、自然に親しんでいるんですね。子供のときの経験は、何にも勝る宝です。自然との共存が、おぼろげながらも分かってくるのではないでしょうか。最近では、クモが一匹いるだけで、部屋に入ることができない若者がいるそうですから……。

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