「若い頃に結婚した人たちと違い、私たちはお互いもう50歳を過ぎているので、一緒にいられる時間もそれほど長くありません。平均的に考えれば30年ぐらいです。ですから、つまらないことで言い争って、険悪なムードを長引かせて時間を無駄にしないようにしています。そのため、(1)ケンカは翌日に持ち越さず、悪いと思ったら、素直に謝る。(2)お互いウソはつかない、隠し事をしない。(3)感謝の気持ちを忘れない。これが私たち夫婦のルールです。ささいなケンカや行き違いは、人間ですから当然ありますが、大きなケンカに発展することはありません」

■結婚がひとりじゃわからなかったことを気がつかせてくれた

 ふたりの話を聞いていると酸いも甘いもかみ分けて、お互いいろんな経験を積んできたからこその味わい深さがある。

「結婚だけが人生の幸せではありませんし、幸せの形は人それぞれですが、それでも、やっぱり結婚っていいものです。私は人生が豊かになり、人にやさしくできるようになりましたね。たとえば、杖をついたお年寄りがひとりで横断歩道を渡っている場合や重い荷物を持って、階段を上がっているお年寄りがいたら、声をかけるようになりました。ベビーカーで電車の乗降に手間取っているときもできるだけ、お手伝いするように心がけています。こんな当たり前のことに気がつくようになったのも彼との結婚がきっかけです。というのも、夫はとてもやさしく、日頃から、自然にこうした行動ができる人だったんです。それで私も真似してみようと。自分でもびっくりするぐらいの変化です。これも結婚の賜物のひとつですね。自分のためだけではなく、誰かのために生きるって素敵なことだな、と結婚前にはわからなかったことです」

 そして夫婦でいちばん大切な約束事が「死ぬまでふたりで手をつないで笑って生きていこう」ということだ。

「もちろん、これからも小さな波風が立つ日もあると思いますが、偶然の再会が導いてくれ、いいタイミングでできた結婚ですから、ふたりの日々を大切にしながら、仲良く生きていきたいですね。50歳からの結婚だからこそ、心からそう思えます」

(取材・文/須藤桃子)

須藤桃子(すどうももこ)
1965年東京生まれ。フリーライター。女性の生き方、料理、健康、ペット(特に)系を中心に活動