それは、「脳は目立った変化がないと反応しない」というものです。相手に良い印象を与えるには、笑顔で接することが欠かせません。それは誰もがわかっていることでしょう。しかし、思うような手応えを得られていないという人は、相手に「好き」のスイッチを入れさせるほどインパクトのある笑顔ができていないのだと柳沼さんは指摘します。本人は笑顔を浮かべているつもりでも、相手の脳が反応しなければ意味がありません。

 そのため、笑顔は「やりすぎ」ぐらいでちょうどいいのだと柳沼さんはいいます。私たちは自分の笑顔を、普段、鏡で見ないのでわかりませんが、中途半端な笑顔は相手から見ると笑顔ではありません。かえって「なんとなく感じが悪い」と思わせてしまうこともあり、逆効果。顔を合わせたら一瞬でパッと「わかりやすい」笑顔をつくり、相手の脳に「笑顔を向けられている」「なんか惹かれるなぁ」と印象づけることが好感に繋がるポイントなのです。会ってすぐのタイミングの笑顔が最大の効果を発揮するので、相手の気分や性格、場の雰囲気などを気にする必要はないわけです。

 しかも、極論すると、笑顔に必要なのは気持ちではなく、形状記憶のように表情を一瞬で笑顔の「フォーム」をつくる瞬発力だと柳沼さんは説きます。スポーツ選手が練習を繰り返すうちに体がフォームを覚えるように、一瞬で人を魅了する笑顔も何度もやっていくうちに表情筋が「記憶」して自然につくれるようになるというのです。「それじゃあ“つくり笑顔”じゃないですか」という指摘には、「笑顔をつくれば、感情は後からついてきますよ!」とにこやかに答えるそうです。これは科学的にも証明されているとのこと。

 空気を読まないこの方法を柳沼さんが指導した企業の多くが、研修後ほどなくして営業や販売、顧客満足度などの成績を伸ばしています。また、職場の雰囲気がよくなったという声や、「ギスギスしていた家庭内の雰囲気が改善した」「恋人と喧嘩しても素直に仲直りができるようになった」「反抗期の子どもが自分の気持ちを話してくれるようになった」などプライベートでも役立っているという声が多数寄せられているといいます。

 空気を読まないほうが、むしろ好かれる。試してみたら、毎日が変わるかもしれません。