そして悪阻がある。

 子どもへの愛情と言うよりも大人としての責任感から、私はこれらのことに対処した。

 妊娠したからといって急に母になる覚悟が定まるわけではない。

 AからBへのジャンプは、時間を要する。頭で考えて、想像力を駆使したって全く追いつかない。

 理屈じゃ追いつかない。

 物理的な、「オキシトシン」というホルモンの力が強烈に働いて、母になるのだ。その結果仕上がった、Bの私。

 目の前で青っ洟垂らして、ティッシュを箱から引っ張り出している10カ月のチビを見ながら、たまにそのティッシュを食べようとするのをコラと制しながら、あの時友人の言っていた「幸せ」とはこれかあ……としみじみ噛み締めている。

 ホルモンに翻弄(ほんろう)される、高齢新米ママの満身創痍(そうい)な日々をつづっていきたいと思う。

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水野美紀

水野美紀

水野美紀(みずの・みき)1974年、三重県出身。女優。1987年にデビュー。以後、フジテレビ系ドラマ・映画『踊る大捜査線』シリーズをはじめ、映画、テレビドラマ、CMなど、数多くの作品に出演。最近では、舞台やエッセイの執筆を手掛けるなど、活動の幅を広げている。2016年に結婚、2017年に第一子の出産を発表した

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